MJ12

 その後ジョンは大佐の計らいによって、最新設備が整ったエリア51の研究室と、優秀な研究員たちを貸し与えられた。

 ここまでくるとさすがの博士も大佐が本気らしいことは認めざるをえなかったが、それでも頼まれた研究を始めた当初は、まだ多少の疑いもあった。もしかしたらやっぱり例の人形は単なる地球の作り物に過ぎず、調べて改めてその結果を出したところでようやくネタばらしがされるのではないかと。

 しかし研究を進めるほどに、ジョンは考えを変えなければならなくなっていったのである。


 そしてそれからしばらくあと、ついに彼は結論を出し、その成果についての報告が行われることになった。


 招集されたのはジョンと、大佐を含むMJ―12マジェスティック・トゥエルブと呼ばれる、これもまたUFO研究機関とされる組織に所属する12人の重役たちだった。この実在も怪しまれていたが、それはMJ12が存在しないように見せ掛けるためにわざと偽物っぽく思われる証拠を偽造したためだとジョンは大佐から聞かされた。


 そのジョンが資料を小脇に抱えて、カーテンが締め切られ人工の照明で満たされた会議室に入ったとき、スーツ姿のMJ12はすでに長方形のテーブルの長い辺の両側に向かい合う形で座していたが、まだ11人しかそろっていなかった。


「待ちかねたぞジョン博士。一人遅れているが彼には後でもいい、さっそく報告を頼む」


 そう促した大佐を筆頭に、彼らは口々に歓迎したが、ジョンのほうは浮かない顔でふらふらとMJ12の前に出た。

 こうしてやおら明かりが落とされると、ジョンはテーブルの短い辺の片側と相対する壁一面に広がるスクリーンに、傍らのプロジェクターを用いて研究成果の資料を投影しながらの説明を始めたのだ。


 ところがその内容は、かつてMJ12が調査した結果と全く同じだったのである。即ち、例のロズウェル事件のUFOたる人形は、地球外から飛来した物体だという証拠ばかりだったのだ。

 そして解説が終わると、照明が再び灯り気まずい沈黙に支配された室内で、ジョンはすっかり意気消沈した表情で述べたのだった。


「……どう考えても、これは宇宙から降ってきたものだと言わざるをえません」

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