第5話 質問

「すいませーん」とドアに向かって声を掛ける。

いつもだったらすぐにメリーが出てきてくれるのだけど。


「はいはい、ちょっと待っててね」

そんなことを考えて待っていると、ドアの向こうで声がした。

この声は、メリーのお母さんだ!


ドアが開いて、開口一番俺は質問をした。

「リアナおばさん、こんにちは! メリーいますか?」

「あ、あぁ! クリスくん! 元気になったのね! 良かった、心配で心配で……!」

思った通り、ドアが開いて現れたのは、メリーの母親、リアナおばさんだ。

メリーにとっても似た顔立ち。

髪の色は赤毛だが、それ以外はそっくりだ。

「もう、ぴんぴんです! こういしょう、ってやつも残らないみたいですし、カリヤおばさんには、以前と何ら変わりなくきれいに治る、って言われました!」

カリヤおばさんの言っていることを、全部わかったわけではなかったが、以前と同じように遊び回れる、ということだけは理解できた。

「良かった、本当に……!」

リアナおばさんが涙ぐんでいる。

「わ、泣かないでください!」

「ホントに、心配で、クリスくんに何かあったらどうしようかと……!」

リアナおばさんがハグをしてくる。

「本当に、良かった……!」

「リアナおばさん……」




「ごめんね、ちょっと取り乱しちゃって。それよりも、ちゃんと言わなきゃいけないことがあったわ」

リアナおばさんは立ち上がって服の皺を正すと、頭を下げた。


「ありがとう、クリスくん。うちの娘を守ってくれて」

「そんな、頭を下げないで下さい! 俺が勝手にやったことなのに……」

「関係ないわ。ありがとう」

リアナおばさんは頭を上げずに続けた。




「今、メリー呼んでくるわ。居間の椅子に座って待っててね」

そう言って、リアナおばさんはメリーの部屋の方に向かった。

「あ、はい! お邪魔します」

俺は杖を突きながら、居間に足を踏み入れた。




居間に入ると、食卓の上座に、腕を組んで座る強面の大男が目に入った。

「ベルフォメドおじさん……!」

ベルフォメドおじさんはメリーの父親で、今回の事件で俺たちを助けてくれた。

おじさんの家だから、いるのは当然か。


椅子に座ると、ベルフォメドおじさんが口を開いた。

「君も聞きたいことがあるだろう」

「……はい」

「だが、最初に言わせてくれ。ありがとう。君のおかげでメリーは助かった」

「いえ、俺が勝手にしたことなので」

「それでも、だ。ありがとう」


「では、君の番だ」

そう言っておじさんは、マグカップを持ち上げ口を付ける。

どうやら、言いたかったことはそれだけだったらしい。

本当に、優しい両親だなメリー。


「じゃあ、質問させてもらいます」

俺が言うと、どうぞ、という風におじさんは肩をすくめる。

俺は一度大きく息を吐き、それから質問した。


「おじさんの仕事が騎士っていうのは、本当ですか?」


「あぁ、本当だ。俺は王都で騎士をやっている」

やっぱり、カリヤおばさんの言っていたことは本当だった。

なら、俺が言いたいことは一つだった。


「おじさん。一つお願いがあります」

「……言ってみろ」


「騎士になる方法を、教えてください……!」

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メンタルクソ雑魚な俺が、転生ギフトに『精神力』もらったら世界最強!? 360words (あいだ れい) @aidarei

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