第31話 緊急事態発生
遠くから一頭の馬に跨った兵士が近づいて来た。「董卓様!」と馬に乗りながら叫び近づいて来た。何事か?と馬が到着するのを待っていた。
そして乗って来た馬から転げ落ちんばかりに降りると、息を切らしながら言った。
「と、董卓様!か、何進が、嘉徳殿の前で宦官の段珪、畢嵐が率いた兵によって取り囲まれ、張譲に罵倒されながら蹂躙され、こ、こ、殺されました!」
「な、な、何だとお!」
それを聞いて董卓は、思わず絶句した。口からすぐに言葉が出なかった。とんでもないことが洛陽で起こったと思った。確かに、先帝の霊帝の亡き後の混乱ぶりは目に余るものがあった。外戚の何進が、何皇后が産んだ暗愚の劉弁(少帝)を後継に付けたが、亡くなった父親の霊帝の妻、董皇后がと十常侍が支持する利発な劉協(陳留王)との権力争いが一向に止まる事はなかった。そのため何進が、無茶なことをしたとも言える。それらの争いが、地方の有力者の権力争いへと繋がり、ラップし、スライドし、エスカレートしていった。
そして現状では、一旦跡目争いは矛を納めたはずだ。何進の後押しで皇帝は劉弁になったのだから。それが何故、何進の暗殺と言った事態を産んだのか。漢王室の将来を憂いた行動だったのか。宮中だったので何進の護衛が少なかったのかもしれない。
劉弁(少帝)が、支持する最大の有力者である何進が暗殺されたとなると、皇帝内は大混乱しているだろう。これから大きく政治が動くのは間違いない。袁紹が、何進亡き後は劉弁側の盟主として君臨しようとするだろう。
しかし、董卓は絶好のタイミングで上手いことに丁原から呂布と、その兵士たちを自分の物と出来た。
呂布を手に入れられた事でこの機会を最大限に活かすチャンスをなのかも知れない。このまま新たな兵力の増強を待っていては、千載一遇のチャンスを逃してしまうかもしれない。攻めながら吸収していくしかない。赤兎馬を呂布に与えた。呂布は、赤兎馬の毛並みに魅了されていた。
「こうしてはおられん。洛陽に行くぞ」
董卓は、洛陽に向かう高揚感に満ちていた。今の状況は、溶けた熱い鉄のように変わるだろう。出来るだけ早く洛陽に向かい、宦官たちの権力闘争に上手く楔を打ち込む事が先決だ。そして洛陽に行ったら、丁原の留守を預かる残りの兵士と合流しよう。董卓が、馬に跨がった。
「仲穎(董卓の字)殿、お別れです」
程義宗が別れの挨拶をしにやって来た。
「世話になった」
「お気をつけください。斎勲健が言った事をお忘れなく」
そう言って頭を下げ別れた。
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