第3章 洛陽

第32話 袁紹

陳留王(劉協)の母王栄は、下級女官として王室に入ったが、女官の衣類の下からもわかる豊かな腰つきと、高い乳房をしており、その見た目のギャップとは違って数字にも明るく非常に聡明だった。やがて、霊帝のお手つきとなり即室となると、すぐさま子を宿してしまった。


王栄は、霊帝の正室の何皇后の激しい気性を知っていたため、身に危険が迫るような災いが降りかかるのを恐れ、医師から堕胎薬を手に入れ服薬したが昏倒し寝込んでしまった。その晩、太陽を背負って坂道を登る夢を見て、王栄は「はっ」となり意識が回復した。お腹に命がまだ留まっている事に安心した。

夢の中に太陽が出て来たという事は、この子は必ず皇帝となり、漢王朝を継ぐはずだという暗示に間違いない。この子は絶対に産まなくはならないのだと思った。


その年の4月に男の子を出産したが、何皇后からの妬みを買い王栄は毒殺されてしまった。やがて霊帝の母である薫皇后が、陳留王(劉協)を引き取り育てる事になり、何皇后から命を守る事が出来た。


霊帝が亡くなると、何皇后の外戚だった何進は、劉弁を退位させ跡目につかそうとして宦官たちと対立した。昔から何進と知遇を得ていた地方の豪族、袁紹たちを呼び寄せた。袁紹は同族の袁術と共に洛陽に赴くと、更に董卓たちを呼び寄せ洛陽に蔓延る宦官たちを、政治的にも実力行使を行い朝夕に排除しようと試みたがなかなか上手く行かず、何進に「どうなっているのだ?」と散々催促を受けていたのだ。


袁紹は、最初この要望を受けた時には簡単に出来ると思っていた。しかし、魑魅魍魎が住む洛陽では疑心暗鬼になり、一向に話が進まなかった。何進の要求に答えられないと失脚してしまう危険性があった。


「何進から一体全体何故いつになったら、陳留王(陳留王)一派を排除出来るのだ?と言われている」

袁術に訴えた。

「何皇后が、原因だという話がある」

その言葉を聞いて、思わず袁紹は端正な横顔を歪めた。


「どういうことだ?」

「敵対する宦官の集団、十常侍の中の人物から金品を受け取り彼らを失脚させないようにしているとのことだ」

「まさか。自分の政敵から金品を受け取るだと?ありえん」

「董卓が、その十常侍の中の有力者と通じて最近は、職場放棄していると聞く」

「董卓がか?」

「自分の連れて来た自分の行動を何も知らないんだな」

「ワシには、洛陽の水が体に合わず体調を崩しており、しばらく暇乞いをすると言っておったぞ」

袁術はそれを聞いて呆れるようにこう言った。

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