第30話 ヘッドハンティング

「な、な、何を言っているんだ?」

「仲穎(董卓の字)殿の方が、私の父としてあなたさまより父親として相応しい」


董卓が50人の兵士に守られながら、前に出てきた。「建陽(丁原の字)よ、奉先(呂布の字)が(養)父と呼ぶ存在になるには、彼にどれだけの物を与えられるかによって変わってくるのだ。ワシは、彼に絶対的なパワーを与え、そして名馬の赤兎を与えた。今まさに、奉先(呂布の字)は生まれ変わったのだ。私は、奉先(呂布の字)の新たな創造主として養父に相応しいと思わないか?」


「程のいいベッドハンティングじゃないか!」

「ははは。何とでも言え、遅かったな丁原。奉先(呂布の字)は、今日からワシの(義理の)息子になったのだ!」

董卓が、そう言うと「カラカラ」と笑い出した。

「嘘だろう?奉先(呂布の字)!」

呂布は、首を左右にゆっくりと振った。

「嘘なもんか」

恐れることもなく言い放った。

「裏切り者め!殺してやる!かかれ!」

丁原が命令を出すと、7、8人の兵士が呂布を円形にぐるりと囲った。


そして一斉に矛を呂布に対して突き立てた。露を払うように方天画戟で矛を払い退ける。しかし、背後から矛が突き立てられた。呂布が海老反り苦悶で顔を歪めた。方天画戟を杖にして、倒れないように体を支える。その隙に1人の兵士が、背中から斬りつけた。またもや背中が切れて顔面から地面に倒れた。


「裏切り者の末路だ。覚えておけ!」

丁原が、地面に唾を吐いてからそう言った。そして丁原が叫んだ。

「次は董卓!おまえだ!」

丁原が、そう言って刀を抜いて向かってくると、突然首が弾けて空を飛んだ。丁原の胴体が突然行き先がわからなくなったかのように地面に倒れ込んだ。呂布が、方天画戟を丁原の背後から一振りし首を飛ばしたようだ。顎から滴り落ちた血を右手の甲で拭うと、方天画戟の刃を上にして地面に突き刺した。


落下して来た丁原の首を受け止めた。丁原の引き連れていた兵士たちは、呂布の血塗れの姿に完全に腰がひけてしまっていた。

「あなたへの忠誠の証です」

そう言って、丁原の首を差し出した。首から下はまだ血が滴り落ちていた。董卓も完全にビビってしまった。恐る恐る丁原の首を受け取ると、丁原の兵士たちに行った。

「ワシの配下につけ。悪いようにはせん。今まで通り呂布の配下につけば良いだろう。馬を止めている場所まで戻るぞ」

董卓は、そう言って丁原の兵士に号令をかけた。草木が覆い繁った道を抜け、山道を抜けた。馬を止めていた場所までやっとの思いで辿り着くことが出来た。




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