第17話 出迎え

以前董卓は、1年に数度異民族との交流をしていた。董卓が、部族の長の自宅を訪問すると、家畜をバラして振る舞ってくれた。異民族として違った文化を持っていた彼らは貴重だった。董卓の手土産の倍以上の献上品を渡してくれた。


翌朝、早くに董卓はまた移動を始めた。夕方近くになり、早めにテントを張り休息していると、誰かが馬に跨がり近寄って来た。

「董卓様?」

 派手な民族衣装を着た年配の男がテントの前で止まった。見張りの兵士が身構えたので、その必要はないとばかりに兵士に向かって右手を上下させて警戒を解かせた。他の兵士が、馬の鳴き声を聞きつけてテントから出て来た。


「程義宗殿、久しぶりだな」

董卓が声をかけると、馬から降りて来た。

「色々とお噂は聞いておりますよ。洛陽では飛ぶ鳥を落とす勢いだとか」

「ははは。ここまで聞こえているのか?」

「噂は、どんな名馬の足よりも早いのはご存知のはずだと思っていましたよ。手紙を受け取りましたのでお迎えに上がりました」

程義宗は、そう言って右手で案内しながら頭を会釈し微笑みを見せた。


「今日はどういったご用件でしょう?」

「呪術師を洛陽に連れて行きたい」

程義宗は、今、洛陽が大変な時なのにわざわざここまでやってくるというには、何かあるに違いないと考えていたが、まさか呪術師を洛陽の都に連れて行きたいと考えていたというのは想定外だった。


「誰かを呪い殺すのですか?」

「まさか。呪術で人は殺せないぞ。そんな事をすれば呪術師自身が死んでしまう。ましてや呪い殺せたとしたら、ワシなんかとっくに死んでしまっている事になる」

「ははは。では何を望まれているのですか?」

「おまえたちの部族の中で、蠱毒を持ちいて不死身の身体に変える事が出来る呪術師がいるだろう?以前噂で聞いた事がある」

「斎勲健の事ですか?」

「ワシに会わせる事は出来るか?」

程義宗は、目配せをした。


「洛陽からこんな暗くなるまで馬を走らせて来たのに出来ないとは言えないでしょう?」

董卓は満足気に頷いた。

「しかし、ここから斎勲健の住む洞窟までは、20キロまだあります。今日はすっかり日が落ちました。ここでお休みください。明日朝1番から迎えに来ます。まここでは今から簡単な物しか用意出来ませんが、酒肴を味わってください」

そう程義宗が言うと、「こちらへ」と声をかけた。


すると、董卓の前に美しい女性が膳を持って待っていた。董卓が、思わずその女性の手を握ると、膳をひっくり返しそうになりながら女が言った。

「おやめください」

程義宗が、慌てふためきながら言った。

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