第18話 夜伽の準備

「董卓殿、董卓殿。彼女は、私の妻です。ご紹介が遅れて申し訳無い」

董卓は、仕方なく掴んでいた手を離した。

「道理でいい女だと思ったんだ。なるほどおまえの妻なのか?ならば仕方があるまい。くそっ、今晩は早く寝るぞ。明日の朝、1番にその呪術師の所に行かなくなてはならないからな」

程義宗は、息をホッと気づかれないように吐いた。しかし、董卓はそう言いながらも運ばれてくる料理と酒を飲んでいるうちに急に巻き舌になり怒鳴り出した。

「ワシのテントに女を連れて来い!気の効かない奴め!」


程義宗は、董卓に配慮する事は今後董卓が洛陽で実権を握った時に役に立つ。仕方なく異民族との間で土地をめぐる争いをした際に、捕虜として捕らえた女がいた。その数人を董卓に当てがう事にした。


程義宗は、思わず悲しくなった。まだ董卓が地方の役人だった頃には、こちらの立場は、様々な異民族の違い、文化や風習などを教えていた側の人間が、今では夜伽の準備までさせられているとは。


なんともはや世の中とは、皮肉な物では無いか。董卓は、今や洛陽において勢力争いに勝とうという野心の塊のようなになっていた。その人物が程義宗の妻を見染め、夜の相手をさせようとしたのだ。よくぞ堪えてもらえたとホッとした顔になった。


しかし、董卓は程の頼みを聞くほど逆に重要な頼み事を抱えて来ていると言えた。董卓は、そこそこで切り上げると異民族の女と夜伽をしにテントに向かった。


翌朝、まだ夜も明けぬうちに程義宗は早めの朝食を用意して董卓たちが起きてくるのを待っていた。

董卓が、はだけた衣類のままテントから出てきた。薬草で歯を磨きながら言った。

「程義宗、異民族もたまにはいいな」

そしてニヤリと笑うと、唾を地面に吐いた。


崖のある山道を抜け、ジャングルのような森の中を進み山岳を地帯を抜ける。程義宗の案内で呪術師が住むという岩山に連れて行ってもらった。滝があるのだろうか。水の流れ落ちる音が徐々に近付いていくうちに聞こえて来た。大きな滝にその近くに斎勲健が住む洞穴があった。


よくぞこんな環境の中で、呪術師が住んでいるものだと董卓は思いながら程義宗の後に続いた。程義宗は洞窟の前に立ち止ち止まると、銅銭ではなく金貨を董卓に要求して来た。董卓は、金貨が入った巾着を取り出した。そしてその中から数枚を取り出そうとしたため程義宗は、首を左右に振った。そして董卓から金貨の入った巾着を鷲掴みにすると岩肌の窪みに投げ込んだ。



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