第34話 暗殺者捜し
袁紹が、小首を傾け考えるような素振りを見せた。何進に求められて洛陽に来たのだが、最大の後ろ盾を失ったしまった。本来なら、田豊が言うように撤退する事も考慮しなければならないだろう。袁術に言った。
「公路(袁術)よ、元皓(田豊の字)がいうことももっともな話しではある」
「今は撤退の話は後回しです」
袁術が、席を立ちながらそう言った。田豊が更に進言する。
「恐れながら申し上げます。宮中に進軍するとすれば、落とし所を考慮しながら動くべきです。私たちは一歩引き、かつてここで宦官をしていた曹操に対応させてみたらいかがでしょう?彼は宦官仲間から疎まれ、体良く高官に付けられ地方に追いやられたので、宮中の連中には恨みを感じています」
袁紹は、少し頭を傾け考えた後、近くにいた使いの者に伝えた。
「なるほど。曹操を呼べ」と言った。
曹操は、袁紹の招集に参加し、かつてのライバルであった陳留王(のちの劉協)派の宦官を反乱軍として鎮圧して来た。十常侍の策略により、高官につけられ都から体良く追放されたかつての同僚たちに、恨みを晴らす絶好のチャンスが巡って来た。すぐに曹操がやって来た。100人ほどの雇いの兵を引き連れての参戦だった。まだ若いのに十分な威厳があった。お互いに拱手してから顔を上げ訊ねた。
「何進が暗殺された。孟徳(曹操の字)よ、かつて洛陽の都で宦官となり働いていた者に任せたい。犯人を捕まえられるか?」
「わかりました。犯人は明白でしょう?十常侍をどうするかが鍵になります」
「洛陽での指揮を任せる。ワシの代わりに沮授を行かせようか?公路(袁術の字)を補佐につけよう」
「いいえ、大丈夫です。何百人かの部隊を借りるだけでいい」
「わかった。元皓(田豊の字)、兵士を用意してやれ」
曹操は、拱手してその場を去ると何進を殺害した連中を捕まえる準備に取り掛かるため、幕舎を出て行った。
袁術が、曹操が出て行くのを見届けてから訊ねて来た。
「彼だけでいいのか?俺も沮授と兵を率いて宮中に向かう方が良くないか?」
「孟徳(曹操)だけでは心配か?」
「そういう事ではないが、宮中は広い。他にも手がいるのじゃないかなと思ってな」
袁紹はまたまた首を少し傾け考えた。
田豊が、拱手をして訴えた。
「宮中で、騒乱を起こす事は漢帝の権威の失墜を招く原因になります。袁術様に、何皇后様の対応をお願いするのも良いことかと思います」
「わかった」
袁紹は、そう言って同意した。袁術も拱手して幕舎を出て行った。
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