第35話 袁紹の曹操

曹操は、自軍の幕舎に戻ると、宮中に行くための作戦会議を開いた。曹仁、曹洪たちと手分けして使用人たちを買収し、屋敷の見取り図を手に入れ何処に誰がいるのかを既に把握していた。 

邸宅にいる料理人たちに眠り薬を仕込ませていたため翌朝早くに、段珪、畢嵐、張譲の3人の邸宅を一斉に借りた兵士たちと共に押し入ることにした。その後、宮中に進み関連した人間を尋問することにした。


早朝になり、兵を進めると、それぞれの邸宅に押し入り、あっという間に3人を捕縛し曹操の前に突き出した。

3人に他の仲間の名前を話すように言ったが、当然口を割ろうとしなかった。

曹操が、自分の顎先を右手の人差し指で軽くポンポンと叩くと、3人をじっと見つめ心の中をスキャンした。曹操も劉備と同じように特別な能力があり、相手のリーディングマインドが出来た。いつからそんな能力が身に着いたのかと言われればわからない。

ある日突如、そんな能力が身に着いたとしか言えなかった。相手が何も発していないのに心が読めると自分自身でも驚いた。曹操は3人の心の中を読み他の宦官の名前を見つけ出した。全員を罪に問うと政治機能がストップしてしまうかもしれない。

ある程度でしか処罰するのは難しいだろう。


「よし、宮中に昼までに宦官を集めろ。そしてこの者たちをひったてろう!」

曹操は、3人を縛り馬に乗せて宮中まで連れてくると、袁術軍が待機しているのが見えた。

曹洪が馬上から訊ねた。

「あれは袁術の部隊ですか?」

「何故、公路(袁術)殿の部隊がいるのだ?」

夏侯惇が呟いた。真正面から、袁術が馬に乗り近づいて来た。


「何故、ここに来たのですか?」

曹操が訊ねた。

「宮中は広い。手助けに来ただけだ。陣頭指揮は、孟徳(曹操の字)殿におまかせする」

そう言われて、曹操は納得し宮中に軍を進めた。宮中の門を破り中に入る際、宮中の近衛兵とやり合ったが、名の知れた武将が指揮している近衛兵ではないので、簡単に宮中へ続く門が開いた。


「宮中の中庭で、何進暗殺に関与した者たちの裁きを行う」

そう触れ周りながら宮中を進軍する。曹操は、段珪、畢嵐、張譲からリーディングマインドで読み取った名前の宦官や、その関係者を宮中の庭に連れださせた。縛られて膝まづき動けない3人の前を、曹操はゆっくりと歩いた。

「体良く私を高官に付け、よくも地方に追放してくれたな?」

そう後ろ手に組み歩きながら言った。

「孟徳(曹操の字)、それは誤解だ!」

段桂がそう叫んだ。



 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る