第42話 何皇后

青琑門の焼け跡から、曹操が兵士たちに撤退の命令を出した。

「閣下、どうされました?」

「もう良い。袁紹からの命令は、陳留王(劉協)派を支持する宦官をみな処罰しろということだが、これではただの殺人だ。確かに曹家は、代々宦官で祭ごとの中心だったのに私を疎ましく思い、適当な高官を授け地方に追いやったとは言え、かつては同僚たちだ。ほどほどで良いだろう」

そう言うと、燃え落ちてくる灰を手で払いながら宮中の門を抜け外に出ると、焼け死んだ死体などを処理している劉備たちに出くわした。曹操は、不思議に思った。やけに風貌が立派な兵士たちだった。


「一介の兵士たちの様子ではないな。そこの3人は何者なのだ?」

そう曹操が問いかけると、曹仁、曹洪が曹操を護衛するため前に盾となるように出て来た。3人は拱手をした。

劉備が手を止めて答える。

「私は、漢王室の末裔で劉備と言います。ここにいる2人は私と義兄弟の契りを結んだ弟になります」

その時、曹操が劉備の心にすうっと入ってくるのを感じた。

『何をする!』

劉備がテレパシーでそう言ってブロックした。曹操がギョッとして劉備を見つめた。劉備が話しを続ける。

「長い漆黒の髭を伸ばしているのが関羽。字を雲長と言います」

「関羽です」

拱手をして挨拶をした。

『おまえも、特殊な能力が使えるのか?』

曹操が訊ねてきた。

「曹操です。この部隊の指揮官を任されています」

「こちらは張飛。字を翼徳といいます」

「張飛です」

拱手をしてまたも挨拶をした。

『何の目的で私の心を探ろうとする?』

劉備がテレパシーで訊ねる。


「曹操と言います。素晴らしい弟たちですなあ」

「今回袁紹殿の呼びけで、洛陽の謀反者を打ちに行くという傭兵の募集があった。その際の兵士の募集は、一部隊最低でも100名以上という縛りがあったのにも関わらず、劉備たちはいてもたってもおられず3人で募集兵士に応募し、何とか門番に銅銭を渡し袁術の雑役の部隊に潜り込む事が出来ました」


曹操思った。たった3人で徴募に応じるとは。銀杏でも拾いに行くつもりか?

『初めて同じような特殊能力を持った人間に会って感動しているのだ』と曹操がテレパシーで言った。

「今、何進を暗殺した十常侍の宦官たちと関連した者たちを捕まえ押さえてきたところだ。これで両者処分する事が出来た。また私を地方に追いやった宦官たちを処罰させてもらった。しかし、彼らは元々は私の同僚だ。確かに出世、権力、帝や、皇后たちからの信頼を得るとかさまざまなやり方があり、今回のこのようは武力を用いた事は良くなかった」



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