第39話 合流
郭勝は、怒鳴るようにそう言った。そして趙忠が少しよろめきながら立ち上がるのを見届けると、陳留王(劉協)の手を取り、「こっちだ」と趙忠たちに言いながらバチバチと火事で木が爆ぜる中、崇徳殿に向かって歩き出した。
※
董卓は、呪術師のいた洞窟から帰って来ると、洛陽が見渡せる小高い丘に移動し宮中から煙が上がっているのを見ていた。
「そうか。宮中に火がつけられたのか?」
悲しそうな表情をした。宮中にいた下官など、罪なき人も犠牲になっただろう。董卓は、決して人道的な気持ちでそう思ったのではない。自分が抱いていない女たちが犠牲になったのを惜しがっていただけなのだ。そしてまたポツリと呟いた。
「袁紹は、洛陽を支配するつもりなのか?」
合流して来た李儒にそう訊ねた。
「それは無理という物でしょう。袁紹のような田舎者では、洛陽の都を収めることなど出来るはずかない」
宮中に火をつけられるとは、漢王室の威厳も地に落ちたものだと思った。
「(養)父上(ちちうえ)!」
その声に振り返ると、赤兎馬に跨った呂布が数千の兵を従えて近付いて来た。衒いもなく董卓の事を簡単に、養父(ちちうえ)と呼べるど厚かましさが呂布にはあった。またそのど厚かましさから来る軽薄さが、何処か彼を信用するに足りない人物だと思わせる所だった。
「おおう、奉先(呂布の字)か。我が息子よ」
董卓はそう言いながら、自身で嘘くさい物を感じていた。
「兵士は何名得ることが出来たのだ?」
「全部で5000名です」
「これで以前の倍以上になったな」
呂布を得る事は正に一石二鳥の結果となった。
「そろそろ、笑い玉を飲む時間だ」
呪術を受けた身体が、悶絶しないように呂布に1錠薬を渡した。
「早速だが、我が息子よ。洛陽の様子を探らせたが、既に宮中には、曹操が率いた軍が入り何進を暗殺した関係者や、陳留王(劉協)を支持する宦官どもを一掃しており、今はとても状況が悪い。しばらくは様子を見ることとなる」
「わかりました。今は待つしかないのですね」
「そういう事だ。だがな、そんな状況の中、ネズミが米俵を運んでくる場合がある」
董卓はそう言うと、呂布を見てニヤリと笑った。
「どういう意味でしょう?」
「今にわかる。袁紹、曹操に見つからないようにここでその吉報を待つしかない。果報は寝て待てだ。ワハハ、ワハハ」
董卓は、呂布に見守りは任せたと言った風に、呂布の肩をポンポンと鳴らすと椅子に座り酒を飲み始めた。呂布は、宮中から昇る黒煙を見ながら、これから起こる胸騒ぎを感じていた。
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