第28話 不死身の身体

陸豪が、ナイフを構え呂布に近づいて行く。呂布は頭を抱えたままま床に背中を付け這い回っている。チラッと董卓、斎勲健を見た。地面に倒れるようにしてナイフを呂布に突き刺した。呂布は思わず両足で陸豪を後ろから締め付けると、陸豪の顔からどんどん血の気が引けてきた。 

「止めろ!死んでしまうぞ!」

董卓が叫ぶと、陸豪を地面に叩きつけた。顔面からひどく血が出て来た。


斎勲健が、董卓に言った。

「しばらくは、周期的に身体が莽山洛鉄頭(マンシャンピットバイパー中国の毒蛇)の精霊と同化するために、身体と心がギャップに苦しむ事になる。だが徐々にやがてそれらは時間の経過と共に長くなり、最終的には消え去り無くなる」

呂布は、気でも触れたかのようなに白目を剥き唸り声を上げ続けた。そして身体中から波立つような衝撃波を受けていた。

「その痛みを止めるには、この笑い玉を飲ませるとよい。前に説明した薬だ」

そう言って、懐から袋を取り出し董卓に渡した。

「これを飲ませなさい」


董卓が、袋の中から1錠取り出すと呂布に薬を飲ませるために叫んだ。

「奉先(呂布の字)、この薬を飲めば痛みから解放されるぞ!」

呂布は、ぜいぜいと息を吐きながらもんどり打っていた身体を止めた。痛みを堪えながら口を開いた。董卓が、おそる恐る恐る近付くと、開けた口の中に薬を放り込んだ。

一瞬、痙攣したかのようになると、身体を弓なりにし背中を下に硬直させた。しばらくすると急に空気が抜けるように弛緩した。陸豪に刺されたナイフの傷もすっかり元通りになっていた。


「これは凄い!」

「何だ?この痛みは。背中に熱い火鉢がくっつくような痛みと、腹の底に激痛が走ったと思ったら、その後は身体が軋むような激しい痛みで狂わんばかりになってしまった」


「奉先よ、ワシはおまえの新たなる創造者だ。そしてこの呪術後の苦しみから救えるのはワシしかいない。いいか?ワシの存在なくしておまえは無敵の兵士にはなれない。この現実を知るべきだ。おまえは、ワシと組むしかないのだ」

「俺の身体を呪術に掛け無敵にしてくれと言ったはいいが、こんな苦しみが残るとはな」

「時間の経過と共に痛みは消えていくらしい」


「そうか。切られた痛みを身体は感じることが出来るのか。癒える途中で暫くは火傷のように疼くんだな。だがな、呂布よ。おまえはもはや1人で千人力となった。馬は赤兎で千里を駆ける名馬を与えた。それでさらに千人力。まさにダブル千人力だ!」







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