第27話 最高の戦士
「何だ。これは?」
呂布は、自分の有り余るパワーに驚いていた。
「刀で斬りつけろ!」
斎勲健が、そう董卓に叫んだ。驚いて董卓は目を見開いて見返した。
「大丈夫だ。刀なんぞで恐れに足りずだ!」
しかし、そうは言っても、気でも狂ったとしか思えない。呂布は素手なのだ。せっかく金を出して呪術をかけてもらったのに、斬りつけて死なれたりしたらたまらない。
「何をしている?」
呪術師は、ためらう董卓に諭すようにそう言った。残っている兵士に5人に、呂布に「斬りかかれ」と命令する。
「いいか。真剣にかからないと、おまえたちの命が危ないからな!」
斎勲健が周りを取りかかろうする兵士に、そう叫んだ。5人がためらいながらも刀を抜き斬りかかる。
呂布は、軽く一太刀、二太刀を交わした。そして交わした兵士の脇腹に拳を撃ち込む。
「ぐえっ!」
兵士は、カエルを踏みつぶしたような声を上げて倒れた。呂布は、体を丸めると振りかぶって反対から向かって来た兵士の顎をアッパーで拳を突き上げた。兵士の顎が砕ける音が聞こえた。
兵士は、声にならない呻きを漏らすと、まるで突如、羽がもげた蝙蝠のようにぶっ格好な円を描いて体が綺麗に回った。そして墜落するかのように床に叩きつけられた。それを見た斎勲健は、首を縦に「うんうん」と振りながら頷いた。それはまるで完成した作品が、満足した動作をしたような様子だった。
しかし突然呂布は、自分の頭を両手で抱えて昏倒しだした。董卓は何事が起こったのかと斎勲健を見た。
「その男を斬ってみろ!」
斎勲健が指挿し怒鳴った。顎を砕かれた兵士が、痛みに耐えながら起き上がると後ろから右肩からバッサリ刀を振り落とした。
「うわぁ!」
董卓が思わずうめき声を上げた。折角、金を出して呪術をかけてもらったというのに、刀で背中を切りつけるとはどういう事なのかと驚いて振り返ってた。
しかし、呂布はまるで何事もなかったかのように頭を抱えて苦しみのたうち回っていた。身体を斬られた痛みがまるで感じないかのようだった。着ていた衣類は、背中からパックリと割れ血が吹き出ていた。しかし、まるで時間がさかのぼるかのように血が止まり、傷口が塞がっていった。まるで切られた背中が、口を閉じるかのように傷口が引っ付いたのだ。
斎勲健は、何かを確信したかのように頷くと左手を懐に突っ込み、ナイフを取り出した。そしてそれを近くにいた陸豪に渡すと、「刺してこい」とばかりに顎をしゃくった。驚いて董卓を見ると「大丈夫だ」と陸豪に頷いた。
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