第25話 呪術後
董卓はそう言って嫌らしい顔付きで笑った。呂布は、苦虫を噛み潰したような顔になった。突然のオファーに悩んでいた。
「がははは。悩む事か?」
董卓がまたもや笑い出した。まるでからかうように。そこには、おまえにはこのオファーを断われまいとでも言うような笑い方だった。まるで呂布の胸のうちを完全に見透かしているようにも思えた。
「奉先(呂布の字)よ。おまえがワシとこの金剛石寺で会っているという現実を見ろ。何故、会ったのか?それはおまえの心に隙があるからだ。今更、隠し立ては出来ないぞ。この事実を町中に飛ばせば、流言飛語でワシとの関係であること、ないことが溢れ出すだろう。それはやがて丁原が耳にし、お前に疑いの目を向ける。いいか、このオファーを一旦断ってからでは、今話したような条件では受け入れられないぞ。後で二進も三進も行かずワシの所に来るよりも、今決断した方がいいぞ」
「どうして後からではダメなんだ?」
「いいか。ワシもお人好しのままではいられないんでな。今決めるのなら、先程話した約束は守ろう。後で返事されるのは、足元を見たようで気分が悪い」
またもやカラカラと笑い始めた。呂布は自問自答した。何故、董卓に会ったのだろうか。いやいや旧知の友、陸豪に騙されて連れて来られたのではないのか。「美味い酒が寺の土蔵から見つかった」と言われて来たのだ。
そして「赤兎馬という名馬に乗れるチャンスがあるのだが、乗ってみるか?」と言われてやって来たのだ。
一日千里を走るという赤兎馬も、そして不死身の身体に生まれ変われるというのなら興味を掻き立てられる。最高に魅力的なオファーをして来たということだ。呂布は、どうすればいいのか悩んだ。逡巡しているのが外から見ていてもわかった。董卓が更に笑い出した。
「何を悩んでいる?赤兎馬だぞ。不死身の体だぞ?給料も上げると言っているんだぞ」
呂布は、身体中に電流が走るのを感じた。
「わかった」
董卓が確認するようにこう念押しをして言った。
「いいか。丁原の首を持って来い。約束出来たらこの薬を飲め」
呂布は、目をぐっと見開き頷いた。董卓が包みを取り出した。鹿子玉を呂布の手のひらに載せ飲むように促す。董卓は近くにいた人間に水を持ってくるようにと怒鳴った。呂布は鹿子玉を呂布は右の手のひらに受けじっとして見ていた。
「どうした?毒などは入っていない。呪術師に会うためにこれを飲むのだ」
呂布は軽く頷くと、董卓を見つめやがて覚悟を決めたように手のひらに載せた薬を「ポン」と口の中に放り込んだ。
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