第24話 最高のオファー

「赤兎馬を譲り受けるという話を聞いて、ワシの顔を思い浮かばなかったか?」

「貴殿が、赤兎馬の所有者だったとは知らなかった」

「あの名馬に乗れば、他の馬には満足出来なくなるぞ。乗りたいとは思わないか?」


「ほう。それほど違うのか?」

「ああ、あの馬は傑出した存在だ。ワシでも乗りこなせない。そんな馬には、傑出した人物が乗るべきだ。豪傑が乗ってこそ真の価値が増すという物だ。ワシは奉先(呂布の字)殿が、そのような人物だと熱望しておったのだ」

董卓は、ヤケに下手に出ていた。不自然と言われたらそう見えただろう。呂布は必要不可欠だった。だから必死に口説いているのだ。それは呂布を味方につけることで丁原を無力化出来るのだ。


「奉先(呂布の字)殿の(養)父は、少帝を支持しているがあの愚帝では漢帝国が治らない。ワシも今はそなたの(養)父や袁紹たちに合わせて少帝を支持しているが、陳留王より年長のくせに幼い。奉先(呂布の字)殿、ワシは時代が見ておるのだ。実利を見よ。暗殺された何進は勢いもあったが、決定的にまずかったのは少帝を支持した事だ。少帝を支持する事で私利私欲に走っていると十常侍は見た訳だ。本当に漢の事を考えているのかと。赤兎馬をやるには条件がある。我が陣営の総大将となってもらいたい」

「ははは。そちらの持つ少ない兵力で、総大将か」


「丁原の兵士を全部引き連れて来てもらえたら、すぐ増える。新たな兵士を募集して訓練する必要もない。即戦力で戦場に送り込めるからな。ワシの所に来れば、呪術をかけ不死身の身体を持つようにしてやろうじゃないか。どうだ?赤兎馬と不死身の身体を持てばおまえ自身で千人分、いや1万人の戦力に勝る様になる。そして後は、他の兵を打ち負かしどんどん吸収していけば良いではないか」

「賃金もか?」

「ああ。賃金も今まで以上にやろう。決して悪い話ではなかろう?ただし‥‥」

「ただし何だ?」

呂布がそう訊ねて首を傾げた。

「これらのオファーの交換条件は丁原の首だ。それを持って来い」

「な、なんだとお?俺は丁原の息子(養子)なんだぞ?!裏切るだけでなく、(義)父を殺せというのか?」

董卓は、ため息をつくようにこう言った。


「なあ奉先(呂布の字)殿、これだけの事をしてやるのだ。丁原をクビを持って来るというのは、おまえ自身のワシに対する誠意なのだ。それを見せて欲しい。ワシの所に来るのに、(養)父を殺した所で、倫理もへったくれもあるものか。いっそのことワシの息子(養子)にしてやってもよい。いや、息子(養子)になれ」



 


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