第23話 蠱惑(こわく)
2日かけて洛陽に戻ると、袁紹を中心に暗殺された何進が後押しした少帝派と十常侍側が推す陳留王派の対立が激化していた。丁原も宮中で暗躍する十常侍側との争いでは不利な状況下に置かれていた。董卓は宮中に入ることも出来ず、逆に同じ少帝派から排除されようとしていた。
自宅に着くと李儒から留守中の報告を聞いた後、陸豪を呼ぶように命令した。
急いで呂布を凋落しなければならない。陸豪に呂布を金剛石寺まで連れ出してもらい、後は面談にこぎつければ、董卓自身で説得す事は出来るだろう。後は、自分の部下になり丁原殺害を約束させ、不死身の身体になるべく鹿子玉を飲んでもらい、96時間仮死状態にし呪術を受ければいいだけだ。虎視眈々と、呂布凋落計画を練り実行する日を待っていた。
そして遂にその日が来た。董卓たちは先に寺で待つことにした。呂布が、陸豪に連れられてやってきた。山門を潜り石段を登る。呂布は腰には刀を挿し、近習の者もつれずに幼馴染と会うといった様子だった。
「今日来てもらったのは他でも無い。今から会って欲しい人物がいる」
「改まってどうしたのだ?誰だ?その人物は?」
「赤兎という名馬がいるのは知っているか?」
「ああっ、知っている」
「乗った事はあるか?」
陸豪がそう訊ねた。
「いいや、まだない」
「その人物と会えば、赤兎馬を与えてくれるかもしれないのだがどう思う?」
呂布の眉間が曇った。
「どう思うって?」
「それだけではない。不死身の身体になれるのだ。そして奉先(呂布の字)が出世してくれたら、私も軍師として職にありつく事が出来る。お互いにとってもいい話ではないか?」
「確かに悪い話ではないな。問題は金剛石寺で誰が、俺を待っているかだ。そしておまえは、その人物と引き合わせるまで名前を明かさないらしい」
そう言って、陸豪をチラッと見た。
「まさか。何か疑っているのではあるまいな?」
それを聞いて呂布が、声を上げて笑い出した。
「貴様に俺をはめるような根性があるとは思えない。仮にそんな事をすれば刀の露と化すだけだ」
陸豪の目の前で、刀を鞘から抜き一振りした。その速度と風圧に思わず腰が引けてしまい石段に座り込みそうになった。
寺の石段を進み本堂の前に出てきた。中に入ると、董卓が小さな椅子に腰掛けていた。
「董卓か?」
「奉先(呂布の字)殿、わざわざ足を運んでもらって申し訳ない」
呂布は、一瞬顔を歪めた。義父の丁原と最近反目し合っている董卓が待っていたとは、どういう事だ?
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