第21話 鹿子玉

「幾らだ?幾らだせばいい?更に金貨100枚をそなたにやろうじゃないか?!この金貨は、西洋の国々で使われている物だ。なかなか手に入らないんだぞ」

その言葉に斎勲健は、笑いながら首を横に振った。

「話にならない。この洞窟で生活していると、そんな物は役に立たないと言ったろう?」

斎勲健は、断言するようにそう言うと、ぐにゃぐにゃな杖を程義宗に向けて振りかざした。

「この術の凄さもわからない人間をわざわざ連れて来て、わしに無駄な時間を過ごさせる気か?」

斎勲健はそう言うと、踵を返して洞窟内に戻ろうとした。


「お待ち下さい!」

程義宗が、思わず叫んだ。そして董卓に何をやっているんだと言った表情を浮かべた。董卓も慌てて斎勲健の後ろ姿に叫んだ。

「呪術師よ、わかった。はっきり言ってくれ!どうすればいい?」

董卓は必死さの余り洞窟内に響き渡るような大きな声を出した。斎勲健はゆっくり振り返ると右手を広げ掌を見せた。

「これだけあればいいだろう」と言った。

「5、5、500枚だと?」

董卓は、後ろにひっくり返るかのように驚きながら言った。


斎勲健は首をゆっくりと左右に振った。

「違う。50000枚だ。神霊は史上最強とも言える莽山洛鉄頭(マンシャンピットバイパー中国の毒蛇)だ。そして鹿子玉、全ての祭事の行いなども含めての金額だ。そもそもこの鹿子玉自体で、金貨20000枚以上価値がある。人を仮死状態にはするくらい効力のある薬なのでな。程義宗の紹介だから、まだ値段を安くしているくらいだ。嫌ならば帰っていい。さあどうする?」

最後に確認するように訊ねた。洞窟では使えないと言っておいて50000枚の金貨の要求か。董卓は思わず思案した。斎勲健の術の凄さを知らない以上、これが安いのか、高いのかはわからない。


しかし、呂布がこちらの物になるなら1000人の部隊を雇う継続的な人件費よりも、1回こっきりの呪術と比べたならこちらの方が安く済む。そうだ。呂布が配下に入りその優れた能力と武勇を生かせるなら安い買い物といえる。しばし考えると董卓は同意した。

「わかった。その金額でいい。しかし、今は持ちあわせが無い」

50000枚もの金貨をかき集めなくてはならないのだ。開き直るしかなかった。シルクロードを行き交う商人から金貨を手に入れるしかない。まさかこんなに高くつくとは全くの想定外だった。斎勲健は、この呪術に対して絶対的な能力がある自信があるのだろう。


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