第13話 呂布調略

何進は、宮中の揉め事や、洛陽近辺で起こる反乱や、一揆を鎮圧させるために、袁紹らを呼び寄せた。特に袁紹は良家の出自として取りまとめ役を期待していた。呼び寄せた豪族の中でも丁原は、何進に優るとも思えるほど人となりは粗略で乱暴者だった。官吏としての能力は低かったが、ただ武勇に秀で騎射を得意とし命令を受ければ自分の命も厭わず、反乱や賊を追う際にはいつも先頭に立った。


その丁原が、南県の官吏を経て并州刺史や騎都尉を務めた際にそこで呂布と知り合い養父として召し抱えたのだ。董卓は、丁原の有能な武将として呂布を一目見るなり気に入った。呂布は武人として涼やかであり颯爽としていた。特に呂布のような武将を欲していた。弓を射っても刀を奮っても馬を駆けても武将としては最高の腕前で、全てのスペックが高い人物だ。自分の周りに呂布ような武将が1人護衛についてくれたら、どれだけ枕を高くして眠る事が出来るだろう。董卓自ら洛陽に率いている軍隊はわずか1000人と少なく、自分の陣営にまだ兵は少なく、目立った武将はいない。自分の軍に呂布のような逞しい武将と共に丁原の8000人の兵士がいればなあと思ってしまう。そうすれば洛陽を掌握して今の混乱を鎮めることが出来るのに。だからこそ欲しいといつも思ってしまうのだ。


今洛陽の都で様々な思惑が入り乱れ、何進の要請に基づきそれぞれがこの機会を利用しようと考えていた。丁原とは同志でありながらライバルでもある。まして呂布は、丁原の養子になったぐらいなので金で動くところがある。まず呂布という人物が、どんな性格で嗜好の持ち主なのか知る必要性がある。


まず呂布を凋落するための手始めに、呂布を幼馴染の頃からよく知るという陸豪という人物を部下に配下に持つ事が出来た。董卓は、陸豪を自宅に招き女官たちをはべらせた。

「呂布の家は、貧しい農家で彼は5人兄弟の4番目で、呂布は見捨てられた子供だったんです。幼少の頃は気管支が弱くよく冬になると風邪をこじらせていたので、逆に身体を鍛えて今の強靭な武将となったんです」

細面長の陸豪が、酔いに任せて得意げにそう言った。

「そうか。なるほどな」

董卓は、そう答えながら透けた衣類で踊る踊り子たちをチラッと見た。

「また呂布は、親からの愛情が薄く特に母親がなかなか強烈な人でそんなおまえの身体で軍隊に入っても出世は出来ますまい。おまえの人生は、もはや終わったようなもんだよと言われて、母に見捨てられまいとしたのが今の呂布なのです」

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