第2章 別れと出発

第11話 乱れる漢王室

黄巾の乱を鎮圧は出来たが、その後は混乱に拍車をかける事となった。劉備の思いは、漢王室に蔓延る不忠臣を打ち漢王室再興への願いだ。しかし、一緒に行動を起こす者は関羽、張飛以外他におらず、未だに兵を持つ事が出来ず、洛陽の都に出かけたくとも出かけられない状態だった。


先の霊帝は、先代の桓帝に子が無かったため同じ河間王族から選ばれた人物で、王族としては貧乏な家の出だった。養父である桓帝は、宦官と浪費したため既に資産が底を着き全く金が無かった。金が無ければ叛乱を抑える兵士も派兵出来ない。戦う事さえ出来ない。権威も秩序も保つ事が出来ないし、人身の気持ちも買うことも出来ない。


養子の霊帝は、そこで妙案を考えた。欲しい官位を金で買い取ってもらう売官などを行った。当然、高い位は値段は高くなる。しかし、金で官位を買うような人物がまともな家柄の出の者や品行方正な者がいる訳がない。銅臭と呼ばれるいわゆる賄賂がまかり通るようになり更に霊帝の時代は乱れた。そして売官により官職を得た者たちによる苛烈な税の取り立ては庶民を苦しめた。税を払えない者は、自分の子供たちを人身売買によって税を支払わせるなどの行為、または略奪に等しいような税の取り立てをする者まで出て来た。そして政治が腐乱し世の中が混乱する事となった。


霊帝は軍政を敷き、霊帝の勅語を聞く役職の黄門に蹇碩(けんせき)を置いた。蹇碩は宦官の集団十常侍の筆頭で、その下の将軍の中に何進がいた。何進は政治的能力は低かったが、何皇后の姻戚でまた勇猛果敢で何度も黄巾の乱の後に起こった散発的な反乱を自ら矢面に立ち鎮圧してきたため、霊帝、蹇碩からは非常に信頼を得られるようになった。そのため何進は表だっては霊帝、蹇碩を立ててはいたが、その陰では我が世の春といった風に傍若無人に振る舞った。また英雄色を好むというのだろうか。戦に出る度にその土地、相手の美女を掻っ攫い、乱を鎮圧した土地を草木一本生えないくらいに強奪し略奪した。またこういった一連の行為は、反乱を起こせばこのような過酷な目に遭うという見せしめのために行っていたという事がある。


しかし、そうであったとしても傍若無人の振る舞いに見えた。霊帝、蹇碩もある程度、何進の行いを黙認せざるを得なかった。そのため地方の乱を鎮めるのに、何進が掌握している後漢正規軍では押さえ込む事が出来ず、それぞれ地方の豪族に地位を与え鎮圧させた。そのため余計に漢帝の力は衰退していく契機となった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る