第8話 三義兄弟誕生

劉備も拱手して答えた。

「ワシは、市場で肉屋をしている張飛、字を翼徳と言います。この喧嘩は元々コイツが肉を盗んだ事が原因なんだ」

「盗んだだと?おまえが、看板に石を退かせば持って帰っていいとそう書いたのではないか?」

関羽が横目で拱手しながら呆れたように言った。

「あの巨石は200キロもあるのだぞ。それを退かす人間がワシ以外でもいたなんて。よくもまああんな石をよく退かしたもんだ。逆に感心するよ」

張飛が、拱手を解くとそう言った。

「それもあの石を完全に持ち上げて放り投げるとは。雲長殿、あなたの怪力はワシ以上だと認めざるを得ないなあ」


「ほう。翼徳殿は、しっかりそれをお認めくださるか。はははは。結構、結構」

そう言った後、またもや劉備に拱手しこう言った。

「劉備殿、あなたの言葉は、翼徳と取っ組み合いをしていると私の頭の中の奥底に響きました。それはまるで砂漠の中の一滴の水のように染み入りました。爽快感さえあった。あなたからの言葉を聞いたらまた何度でも聞きたい。語りかけて欲しいと感じました。どうか玄徳殿、私の主君になってくださいませぬか?そして漢王室再興の夢を遂げようではありませんか?」

「雲長殿、その事は志しとしてはありますが、今の私は日々の暮らしにも事欠く程の筵売りなのです。どうかお立ちください」


「それが何だというのですか?玄徳殿は、漢王室の末裔なのでしょう?私は徳のある人物を捜しておりました。どうか我が主君になってください」

劉備は困りながら、何度も両手で関羽の腕を下から持ち上げて立たせようとしたが立ち上がろうとしない。

「雲長殿、今の私には漢王室再興など夢想に近いのです。現状では家臣など到底持てる訳がありません」

「ならば、義兄弟ならどうですか?玄徳殿は、私を養う必要もない。これならいいのではないですか?」

尚も関羽は食い下がろうとした。


「そうですね。それならいいでしょう。義兄弟なら契りを結べます」

劉備が頷いで答えた。

「雲長殿、歳は幾つですか?」

「22歳だ」

関羽は、拱手し頭を下げたまま劉備にそう答えた。言った。

「では、雲長殿はワシより3つ上だ。こりゃいい」

張飛が劉備、関羽に言った。

「今回初めてワシより凄い人間に会った。よし決めた。あんたを義兄として崇める事にした。いや、いや断る事なんて出来ない。兄者、これは決まっていたんだ。運命なんだ」

隣に膝まずく関羽の肩をポンポンと叩くと、また劉備に向かって拱手した。





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