第7話 喧嘩の仲裁

母親は、劉備の目を通して2人の喧嘩を見て、劉備の持つテレパシーの力を利用し彼の頭の中に直接語りかけて来たのだ。当然、母親も特殊能力の持ち主だった。劉備は、テレパシーで二人に話しかけた。すると二人は急に反発し合う磁石のN極とN極のようにパンと突然離れ、それぞれが真っ反対の方向に吹っ飛んだ。


驚きながら二人が周りを見渡した。身長180センチ前後の男が一人ポツンと立っていた。

「今、呼びかけたのはおまえか?」

張飛が、驚いたように話しかけた。関羽も目を見開きながら劉備に訊ねる。

「おまえは、何者だ?何をした?」


『辞めなさい。大の大人が闘う事はお互いを傷つけるだけだ!』

頭の中で反響する劉備の声に関羽は、稲妻に打たれたかのように立ち尽くした。それを見た張飛がこの時ばかりと突進しようとした。

『よさないか!大の大人が喧嘩をすると互いを傷つけ合うだけだ!』


張飛は、頭の中に響いてくるこの声は何処から聞こえてくるのだろうかと頭上を見上げた。関羽の方を見ると、劉備と目と目が合ったまま動かなくなっていた。

「あなたは何者なのですか?」

関羽が訊ねた。劉備が関羽に近づき言った。

「私は、中山靖王劉勝から途切れずに系図が続く漢王室の末裔で劉備、字を玄徳と言います。恥ずかしながら、今は母親と藁を編んで筵や草鞋を売っていますが、世が乱れ漢王室を利用する不逞の輩を撃つべくするにはどうすれば良いものかと思案しつつ、日々悶々とした生活を送っています。どうかお立ちください」

そう言って、関羽の組む腕を下から支え、立つように促した。関羽は一瞬立ちかけたが、またもや直ぐに恐縮しながら膝まづき拱手しながら言った。

「おおぅ、そうでしたか。私は関羽、字を雲長といいます。今は塩を販売しにこの地に来ていますが、将来を生死を伴にしても良いと思える人物を探していました」


「私のテレパシーは、受ける人間、距離、感度にもより変わるのです。二人には凄く私のテレビシーが届いたようです。そのため直ぐに取っ組み合いを辞めていただけた。今はただただお二人に怪我をしなくて良かったと思っています」

「漢王室の末裔という割にはおかしな技を使うじゃないか?どんな手品を使っているというんだ?」

そう言って、張飛が訝った。関羽が膝づき言った。

「これは手品ではあるまい。劉備殿の徳があってこそ使える技なのだ。その事が匹夫にはわからぬか?!」

張飛はその言葉に驚き慌てて、関羽と同じように両膝を着き拱手をした。



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