第2話 三人の義兄弟


「同年同月同日に共に産まれずとも、我ら三人、時は違えども兄弟の契りを結び、心を同じくして助け合い困窮する者たちを救わん。そして上は国家に報いて、下は民を安んずることを誓う。そして我ら兄弟は、同年、同月、同日に死せん事を願わん。漢王室よ、実にこの心を鑑みよ。義に背き恩を忘れたならば、天人共に抹殺すべし」

3人が拱手をし頭を下げた。


三人の義兄弟には、それぞれ特殊な能力が備わっていた。義兄弟の長兄の劉備(字を玄徳)には、漢王室の末裔でありながら母親と筵をつくっていた。しかし、この時代にしては潔癖で仁義を重んじ、シルクのように相対する人の心を諫めなだめてしまうような高貴さがあった。そしてテレパシーを使える能力があり、相手の頭の中、脳に語りかけると相手は深く話される言葉に陶酔してしまうのだ。特に今3人の義兄弟の誓いをしている関羽(字は雲長)、張飛(字は翼徳)は、劉備がテレパシーで語りかけたところまるで井戸の中で共鳴するかのように響いた,


末弟の張飛、あの日の事をこう表現した。

「俺たちは、兄者に脳髄を揺さぶられたんだ」と。

純粋な心の持ち主には大きく共鳴する。それが劉備が持つテレパシーの凄さなのだ。劉備の義兄弟の次兄関羽も、その時の衝撃を忘れられないといった風に頷いた。

「兄上に語りかけられた言葉は、脳髄から連なる神経の井戸の底に向けて大きな石を落とされたようにドシンと響いたような気持ちがした」と答えた。


劉備のテレパシーは、常時使えるものではなく、近距離で相手との波長と波長をラジオのチューイングのように合った時に、初めてクリアーに鮮明に相手の頭の奥底に雷鳴のように轟くようになるのだった。そのためには、距離があれば通じなくなる。


赤ら顔に長い漆黒の真っ直ぐな髭を生やしているのが関羽の風貌で特徴的な所だ。しかし、その戦闘能力は高く、身体に気合いと力を入れると全身の筋肉が鋼のように固くなり、刀で切りつけても刃が折れるくらいだった。


           ※

三兄弟が知り合ったのは、二十代に入ってすぐの事だった。当時は関羽は、まだ塩の販売をしていた。そんなある日、遠い道のりを遥々関羽がは塩の販売のために市場にやってきた。しかし、すっかり日暮れとなってており、どの店も仕舞い支度を始めていた。関羽は、せっかく遠くからやって来たので一杯引っかけたくなった。背中に塩を積んだ馬の手綱を引きながら、店を探していると、やっと一軒手頃な屋台を見つけ腰掛けた。





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