第3話 目星

 俗に現場百回といわれるように、捜査官刑事は犯罪現場に立ち戻って新たな証拠や証言を掘り出すのが基本だ。


 玲香と美由紀は烏ヶ森公園に到着すると、園内をくまなく探しまわり、昼間だというのに酒盛りをしているホームレスの一団を見つけ出した。


「そういやあ、なんかヘンな声がしたなあ」


 赤ら顔のホームレスがろれつの回らない舌でいう。


「ヘンな声?」


 美由紀が身を乗り出してメモする。


「確か……ベガー、ベガー…っていってたような気がする」


「ベガー……ですか?」


「ああ、それそれ、おらも聞いただよ」


 別のホームレスがすかさず同調した。白髪交じりの髭もじゃの男で、隣の若い男を小突くと、


「ほれ新入り、おめも聞いたべ?」


 小突かれた長髪の男はこくりとうなずき返すのみだ。どうやらここへきて日が浅いらしく、ホームレスの一団には馴染みきっていないようだ。


「決まったわね」


 玲香はそう呟くと踵を返した。

 どうやら犯人の目星はついているようだ。


「あっ、待ってください、せんぱーい!」


 美由紀はさっきから玲香のあとを追いかけてばかりだ。

 玲香とともに覆面車両にもどる。

 と、そこへ警察無線が入った。

 課長の水上からだ。


「所轄が押さえた防犯カメラの映像がまわってきた。犯人がばっちり映っている。すぐ戻ってきてくれ」



    つづく

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