第2話 女刑事
「っ!?」
そこにいたのは黒のタンクトップ姿の若い女性であった。ボトムスが迷彩柄のカーゴパンツだ。このひとが城戸刑事なのだろうか?
「はうっ、はうっ!」
城戸と思われるひとは、天井から吊されたサンドバックを一心不乱に打ち据えている。
それは訓練というよりかは怒りや憎しみを叩きつけているかのようだ。
「おーい城戸、その新入りと一緒に法医学研究所へいってくれ。烏ヶ森の例の殺し、検死結果があがったそうだ」
水上課長の声が届いてきた。
城戸はサンドバックをたたくのをやめると、汗をかいたタンクトップを無造作に脱ぎ捨て生成りのTシャツに着替え、上から黒の革ジャンをはおった。
「あっ、あたし小野美由紀……」
「
自己紹介はロッカー室で聞いていたらしい。城戸玲香は先に歩きだすとクルマのキーを美由紀に放って投げた。
「運転しな」
法医学研究所第6号検案室の検死台の上には真新しい女性の死体が横たわっていた。
首筋に両手で絞められたような圧迫痕がある。
「指紋は?」
玲香が司法解剖を担当した法医学医に訊いた。
「なにも。でも、手や指の形から前の事案と酷似しているわ」
40歳前後と思われる担当医がため息混じりにいった。髪を栗色に染め、後ろでまとめあげている女医だ。
同性がこのような形でつづけざまに被害に合うのを見て、やるせない思いにかられているようだ。
「あいつか……」
玲香はそうつぶやくと、あいさつもそこそこに検案室を飛び出した。美由紀も慌てて先輩のあとを追う。
「ま、待ってください、あいつってだれなんですか?」
つづく
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