異常性欲絞殺魔

八田文蔵

第1話 魔人

 ベガーー!

 ベガーー!


 どこからか奇怪な声が聞こえる。

 烏ヶ森公園からすがもりこうえんの沼の辺りだ。

 時刻は午前1時。

 女子会の呑み会で帰りが遅くなった飯島真理いいじま・まりは、公園を突っ切って自宅マンションに帰ろうとした。


 人けの絶えた公園は闇が濃く、不気味な雰囲気が漂っている。真理は思わず足を早めた。

 と、そのとき――


 バサーーッ!


 茂みのなかから人影が飛び出てきた。

 全裸の男だ。

 禿頭でこめかみにはミミズのような青筋が浮いている。


「キャーーッ!」


 その絶叫が響いたのは一瞬で、すぐさま辺りは静寂に包まれた。

 まるで何事もなかったかのように……。




「本日付で配属となりました、小野美由紀おの・みゆきです。よろしくお願いいたします」


 警視庁性犯罪特捜室。性犯罪の撲滅と被害者の根絶を目的として設立された部署で、それは庁舎の地下三階にあり、ここにひとりの女刑事が新たに配属となった。


「……ああ、よろしく。課長の水上みなかみだ」


 水上は読んでいたスポーツ新聞から顔をあげずに奥のロッカー室を指し示した。先ほどから激しい気合いとともになにかを、どすん、どすんとたたく音が響いている。


「城戸刑事とコンビを組んでくれ。そこにいる」


「はあ……」


 城戸刑事というのは警官に多くいるタイプのゴリゴリのマッチョだろうか?

 美由紀はおそるおそるロッカー室のドアを開けた。



    つづく

 

 

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