第1章 《百花の魔女》と幻の花

第6話 猫と魔女と空の旅



箒に乗り、急上昇した私たちは木より高い位置に到着した。


辺り一面を見渡すとかなり遠くまで木が広がっている。これでもかというくらいの濃い緑だ。


しかし、私達から見て正面右側、今いる場所からかなり離れたところは一部、緑ではなく黒だった。


「シロエ、あそこは……?」

「あー、あそこはこの間山火事だったところだね。私がクロを見つけたのもあそこら辺だよ。」


なるほど、黒く見えるのは木や草が燃えた跡だったからか。


「そういえば、あの火事は何が原因だったんですか?」

「う〜ん、そのまではわかんない。誰かがあそこで火系の魔法を使って、それが木に燃え移ったとかかな…。」


そうだった。この世界には魔法があるのだ。きっと、そういうことも起こりうるのだろう。


「それで、このまま目的地に向かっていくんですよね?」

「うん、そうだよ。あ、そうだそうだ。その前に、クロが落ちないようにと…【影拘束】!」


シエルがそう口にした瞬間、私は体に謎の違和感を感じた。


(あれ……?身体が動かせない…?)


「えーと…、今のは?」

「今のは、【影拘束】っていう魔法で、対象にした存在の影をその場に固定して、動きを封じる魔法だよ。影が動かせないと、本体も動かせなくなるの。そこまでスピード出すわけでもないけど、落ちちゃったら危ないでしょ?だから、クロの影を私に固定したの。」


確かに…この高さから落ちたら一巻の終わりだ。


「あ、首から上は対象外にしてあるからね。顔の向きまで固定しちゃったら、折角の景色が楽しめないもの。」

「わざわざ、ありがとうございます。」


私は彼女の気遣いに感謝する。


「さあ、では…目指すはカノール王国の南都ジニア!いざ行かん。」


直後、私たちを乗せた箒は直進し始めた。だんだんと速度が上がっていき、しばらくすると一定の速度となった。今の速度は、自転車の漕いでいる時と同じ位のスピードだろうか。

しかし……


自転車とは違い、今いる場所は上空。

見えるものが全然違う。特に今日は一面の青空で遠くまでよく見える。


木々の隙間からは森に住む動物達が見えるし、たまに鳥達が私たちの側までやってくる。彼らは普段こんな素晴らしい景色を見てるのか。


「今日は天気が良くて、風が気持ちいいですね。」

「そうだね。嵐の中を飛んだりするのはすごく憂鬱になるんだけど、こう天気がいい日だと空を飛ぶのとても楽しいでしょ?」

「はい!」


(空の旅……これは好きになりそう。)


「どれくらいで目的地に着きそうですか?」

「この速度だと、20分もすれば街が見えて来るかな〜。」

「分かりました。」


私は周りの景色を見ながら、空の旅を満喫していたのだった。

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