第5話 猫と魔女と行き先と旅立ち
朝食後、私とシロエは机の上に広げた地図を見ながら最初の行先を考えていた。
「さて、とりあえず近場の国から行ってみましょうかね。」
「旅って…予定なんかは…」
「そんなのないわよ。行き当たりばったり。とりあえず色んな所を巡りながら、変身系の魔法についても調べるって感じで。」
まぁ、そういう旅も楽しいだろう。
私は机の上の地図に視線を戻して、
「近場というとこのカノール王国でしょうか?」
地図に描かれているひとつの国を指しながらそう言った。
この世界は4大大陸と呼ばれるその名の通り、4つの大陸と数多くの島、そして広い海から成っているらしい。
私たちが今いるのはアルデラと呼ばれる4つの中でも比較的人間の過ごしやすい環境が整った大陸だそうだ。
「そうね、この森から1番近いのはそこかしら。」
「どのような国なんですか?」
「カノール王国は通称“花の国”って呼ばれていて、色んな花が咲いている国なの。とても自然豊かな場所よ。花から採れる甘い花の蜜を使った美味しいお菓子がたくさんあるわ。」
お菓子か…どんなものがあるのだろう。
日本にいた頃はよく猫カフェに行って、スコーンやケーキを食べていたっけな。
(………猫って花の蜜なら食べても大丈夫だよね?)
「まぁどこに行くかは、クロが決めていいわよ。」
「それじゃあ、私この国に行ってみたいです!」
「オッケー、決まりね。」
そう言うと彼女は別の部屋に向かった。
(荷物でも取りに行ったのかな?)
数分後、彼女は再びリビングに戻ってきた。
「あ、着替えたんですね。」
戻ってきた彼女は今まで着ていたラフな部屋着ではなく、大きめの黒いマントを着ていた。こうみると本当に彼女は魔女なのだと実感する。
「どう?引きこもってるとこの姿になると滅多にないから…似合ってる?」
「はい、とても綺麗です。」
彼女の髪は限りなく白に近い白灰色で、黒のマントと対比になっていて本当に似合っていた。
「うふふ、ありがとう」
ふと、気になったことがあったので彼女に尋ねてみる。
「シロエって…、どんな魔法を使う魔女なんですか?」
これまでの彼女の発言から察するに、魔女にもそれぞれ得意分野があるようだ。
だから、私は彼女がどんな魔女なのか疑問に思った。
「あ〜、そういや話していなかったわね。私は一通り適性はあるから、一応初歩的な魔法は大抵使えるんだけど、専門は影魔法よ。」
「影魔法ですか?」
「うん。まぁ基本的には影を操る魔法ね。ちなみに、これから旅に出るのに手ぶらなのは【影収納】って魔法で自分の影の中に着替えや道具は仕舞っているからなのよ。」
「それは凄いですね!?」
どうやらシロエはあの青い猫型ロボットのポケットよろしく、影から色んな物が出せるようだ。
私は心の底から驚いていた。
「まぁ、魔法については後でゆっくり教えてあげるわ。そろそろ出発しましょ。」
彼女は玄関に移動し、置いてあった箒を手に持った。
「箒……?もしかして、その箒で空を飛ぶんですか!?」
私はジ○リの宅急便を頭に思い浮かべながら尋ねた。
「そうよ。メジャーなのはやはり箒かしらね。まぁ…例外もいるんだけどね。」
彼女は片手に箒を持って、玄関の扉を開けた。
「さぁ、私の肩に乗ってクロ。これから、よろしくね。」
「あ、はい!よろしくです!」
私は彼女の肩に軽々と乗った。この体になってから、身体能力は上がった気がしてる。
私を肩に乗せたシロエは玄関の外に出て、箒に跨った。そして….、
「いざ、出発〜。」
彼女の一言と共に、私たちの目線は一気に上昇した。
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