第4話 猫と魔女と朝食と提案
〜数日後〜
私はクロエに用意してもらった簡易寝床の上で目を覚ました。
タオルと木の枝を使って作られた寝床は触り心地がとても気持ちよかった。
あの日に比べて、私の体調はすっかり良くなっていた。昨日は外で体を動かしたくらいだ。
私は寝床から出て、その足でリビングに向かう。四足歩行も少しは慣れてきていた。
リビングでは既にシロエがいて、朝食を用意していた。
「おはようございます、シロエ。」
「あ、おはようクロ。」
お互い、簡単な挨拶を交わす。この数日間でシロエとはすごく仲良くなっていた。
シロエが朝食の乗った皿を机の上に配置する。その後、彼女は椅子に座り、私は机の上に移動して置いてある皿の前に座る。
「では、朝食にしましょう。」
彼女の一言のあと、2人一緒に食事の挨拶をする。この流れはここ数日変わっていない。
「「いただきます!」」
私の前には拾われたあの日に飲んだスープと軽く焼いた鳥肉が置かれていた。
シロエの前には同じスープといくつかのパンが並べられていた。
私はまずスープを飲む。味はあっさりしていて、野菜などの甘みが引き立っている。このスープはシロエお手製で彼女のお気に入りだそうだ。この世界に来て初めての食事だったから、私にとっても忘れられない味になるだろう。
次に鳥肉。
猫になってから、最初は食べ物をどうしようかすごく悩んだ。その後、シロエの提案で森に住む生き物で食べられそうなやつ捕まえて食べることにした。
実際、ここ数日はシロエと協力して捕った鳥や魚を食べて過ごした。
今食べている肉は森の中に住む大きめの鳥の肉で、彼女に頼んで軽く焼いてもらった。
精神的には人間なのでやはり生肉には抵抗があったからだ。
一応聞いたところによると、この世界にも鶏や牛はいるらしい。旅に出たらきっと懐かしいお肉が食べられるだろう。
この鳥肉も思っていた以上に美味しくて今ではお気に入りだ。
「クロってすごく美味しそうに食べるよね?そんなに美味しい?」
私の食べる様子を見て、彼女はそう話しかけてきた。
「はい、お肉とても美味しいです。そういえば、シロエはあまりお肉食べないですよね。」
私はこの数日で彼女が肉を口にしたところをほとんど見てない。最初に捕った鳥を焼いて見た時に少し味見した程度だ。
「そうね。どちらかというと野菜とか果物を食べることの方が多いかな。」
「なるほど。シロエのそのパンもとても美味しそうですね。」
私はシロエの皿の上にあるパンを見る。見た目は元にいた世界のロールパンにすごく近い。香ばしい匂いが漂っている。
「このパンね。これはローリムと呼ばれるパンで街なんかだと色んな店で売られているわ。」
「ローリムですか。私の世界にも似たようなパンありましたよ。」
「ま、私は引きこもりだから、このパンは全て自分で焼いたものだけど。」
パンを自分で焼くなんて、私には出来ないだろう。特に今は猫だし…。
「シロエはすごく料理が上手ですよね。」
「あら、そう言ってもらえるととても嬉しいわ。まぁ何年も料理してるからね。」
彼女はローリムを1つ手に取り、自分の口元に運ぶ。
「うん、今回もしっかりと焼けてる。」
「食べたい…。」
「その身体だとね…。中身は人間だとしても食べるものは猫に合わせた方がいいでしょうに。」
「そうですよね…。」
鳥肉は美味しいけど、やっぱり人間らしく色んな料理が食べたい。
「そうね…、一応クロにも魔力はあるみたいだし、人間の姿になれる魔法でも探してみる?」
「そんなのあるんですか!?」
シロエの突然の提案に私は直ぐに食らいついた。
「あると思うわよ。変身系の魔法自体はあるんだし。私は知らないけど、その手の専門家にでも聞いてみればわかると思うわ。」
「シロエの知り合いで、知ってそうな人っていますか?」
「知り合いか………。変身魔法を使う人は1人知ってるけど、私も直接会ったことはないわね。小さな女の子や白猫、時には大きな鳥の姿の時もあるとは聞いた事あるけど。どこにいるかも探してみないと分からないわ。」
「分かりました。可能性があると分かっただけでもすごく嬉しいです。」
私は彼女の提案で朝からとてもいい気分になっていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます