第3話 猫と魔女とこれから

「トウキョウ、スマホ、シンカンセン…君が元いた世界はすごいところなんだね〜。」

「そうでしょうか?」


私は元の世界、地球の様子や生活、文化について多くのことを彼女に話していた。


「うん、インターネットだっけ?そんなものはこの世界にはないね。私にとっては未知なものばかりだ。色々なことを聞けてとても楽しかったよ。」

「こちらこそ、楽しんでいただけたなら、何よりです。」


彼女は私の世界を大層気に入ったようだ。聞いたところによるとこの世界は現代日本とは大きく違い、どちらかというと中世ヨーロッパのイメージの方が近いようだ。


そして何よりこの世界には魔法があるらしい。まぁ彼女が魔女を名乗った時点で少しは予想出来ていたけど…。


「私からしたら魔法が実在している世界の方が驚きですね。私の世界では創作の中だけのものだったので。」

「そう?まぁ、魔法は存在してても使えない人の方が多いかな。一人一人に適正があるから。王族や貴族の方が使える人が多いとは言われてるけど。魔力は誰にでもんだけど、魔法は誰にでも使えるって訳ではないのよね。」


私は日本にいた頃はファンタジー小説をよく読んでいた。だから魔法が実在することにとても興奮していた。私は使えないんだろうか?


「猫でも魔法って、使えるんですか?」

「どうだろ……。魔獣のような魔法を使う生き物もいるくらいだし、使える可能性はあるね。ただ適正があるかは今のところ分からないかな。」

「そうですか。」


魔法…使ってみたいな…


※※※※※※※※※※※



様々な雑談をしているうちに私たちはスープを飲み終えていた。


彼女はスープの皿を片付けながら、私に尋ねた。


「君はこれからどうするの?」


私はすぐに質問に答えることが出来なかった。


この未知の世界にやってきて、それも猫という今までと違う体で今後どうすれば良いのか…。私にはそれが想像出来なかったのだ。


「もし…よかったなんだけど、私と一緒に旅でもしない?」

「え??」


彼女の突然の申し出に私は目を丸くした。


「あ、いきなりでごめんなさいね。あなたの世界について、沢山お話してもらったから、今度は私がこの世界の色々ところに連れて行ってあげたいな〜なんて思ってね。」

「え…いいんですか…?」


私は困惑していた。助けてもらっただけでなく、この世界の案内もしてくれると言うのだ。


「私は別に構わないわよ。」

「それに旅に出るって…この家はどうするんですか?」

「ずっと引きこもってばっかだから、そろそろ色々なところに羽伸ばしたいと思ってたところだし。まぁ静かに暮らしたいのであればこの家に居座ってもらって構わないけど。」


私はしばらく考え…決断を下した。


「じゃあ…お言葉に甘えて、私もこの世界を旅してみたいです。」

「決まりね!」

「えーと…シロエさん。こ、これから、よろしくお願いします。」

「呼び捨てでいいわよ。こちらこそ、よろしくね。」

「分かりました、シロエ。」

「私はなんて呼べばいいのかしら?」

「シロエの好きな風に呼んでもらって大丈夫ですよ。」

「あ、そう?じゃあ、その綺麗な毛の色と名前を元に、これからはクロって呼ぶね。出発は3日後ぐらいで大丈夫かしら?クロの体調が万全になってからの方がいいだろうし。」

「大丈夫です。」


そして、私のこれからの事は案外あっさりと決まったのだった。

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