第2話 猫と魔女と会話とスープ
彼女に抱きかかえられた私はしばらくして、森の中にある小さな一軒家に到着した。
(ここは……彼女の家なのかな?)
女性は慣れた手つきでドアを開け、そのまま家の中に入る。
「ただいま〜。えーと、タオルはどこだっけな〜。」
彼女は帰宅の挨拶をしたが、返事は返ってこない。おそらく、彼女はここに1人で住んでいるのだろう。
彼女は私をそっと机の上に下ろし、タオルを探しに別の部屋に向かった。
今は私がいるのは所謂リビングだろうか?
一応整理はされているが、至る所に本が積まれ物で溢れている。
部屋の中を見回していると、タオルを片手に持った彼女がリビングに戻ってきた。
そして、手に持ったタオルを使い、私の体の汚れを丁寧に拭いてくれた。
(なんだろ…これすごく気持ちがいいなぁ…)
一通り私を拭いた彼女は再び丁寧に机の上に私を戻す。
「あ、そうだ!体冷えてるだろうから、温かいスープを用意してあげるね。」
そう言うと、彼女はまた別の部屋へと向かっていった。
今の私って猫なんだよね。猫って…スープ飲めるのかな…?
そんなことを考えていると、彼女は2つの皿を手に持ち戻ってきた。
「はい、簡単なものだけど…よかったらお食べ。」
皿には黄金色の透明なスープ注がれていて、白い湯気が立っている。
見た目はすごく美味しそうだ。
(お礼を言わないとなぁ…)
私は心の中で言うつもりでお礼を言う。
「あ、ありがとうございます。」
しかし…私の口からはしっかりと言葉が発せられた。
「「えっ!?」」
私も彼女も……あまりの驚きに一瞬だが言葉を失った。
「ね、猫が、しゃ、しゃべった!?」
「わ、私も今…すごく驚いています…。」
とりあえず、喋ることができるようなので…私はしっかりと彼女にお礼を言った。
「えーと、わざわざ助けていただきありがとうございました。」
「あ、どういたしまして。喋る猫なんて初めて見たよ。せっかくだから名乗ろう。私の名前はシロエ・アーマリア、一応これでも魔女の1人なんだよね〜。ま、今は森の中で本ばかり読んでるただの引きこもりだけどね。あなたの名前は?」
「私は…黒姫木葉と言います。」
「なんか、珍しい名前だね。猫の世界だとそういうものなの?」
「いえ、実は…私…」
私は命の恩人である彼女にこれまでのことを一通り話してみた。
※※※※※※※
「なるほどね〜。元々は別の世界の人間で、猫に生まれ変わったって感じなのかな?」
「たぶん、そうなりますね。」
「面白いね〜。そうだ、折角だからあなたの世界のこと話してよ。そのスープを飲みながらでいいから。」
「わかりました。助けてもらったお礼に、たくさんお話しますね。」
私はスープを飲みながら、元の世界について様々なことを彼女に語った。
ちなみに、彼女が出してくれたスープはとても美味しかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます