第2話 とある日の帰り道
仕事が終わり、夕暮れの中、いつもの通勤路をいつもどおり歩く。
職場から家は歩いて40分くらいのところにある。
バスや自転車などを利用しても良いのだが、最近の健康診断であまり良くない結果が続いたので、気休め程度に歩くようにしている。
途中に桜が綺麗な公園を通りがかる。今年の桜はかなり長持ちしていたが、世界的なウイルスによるパンデミックにより、この地も例外なくウイルスが侵入し、花見はもとより、日常の生活を送ることさえ難しい状況である。
「夏には落ち着くかな・・・」
そう呟いていた。
そしてふと、後の時の言葉を思い出す。
「そのままでいてほしい」
妙に引っかかる。
相手は自分より随分と年下で、何となく苦手なタイプだ。
どこがどうと言うわけではないのだが、掴みどころがないと言うか、何を考えているのかわからないと言うか、まぁ、年齢もあるのだろうが、今まで関わってきた同い年くらいの人たちとは違う感じがした。
雑談もするのだが、あまり続かない。
のだが、
相手の言いたいことや気持ちは何となく分かってしまう。
なんなんだろうか。
もっぱら最近のちょっと引っかかっていることである。
少し公園に寄ってみる。
ここは人気も少なく、濃厚接触になるような公園ではない。むしろ今に至っては貸し切り状態だ。
近くのベンチに腰をかけ、上空を見つめる。
ちょうど真上にある桜の木は、他のものと比べると花びらが随分残っている。
この気だけ風当たりが悪いのか?
などと考えているとふわぁっと心地よい風が吹き、青甘いかをりをさせながら花びらが舞っていく。
気温もちょうど良くふとまぶたを閉じる。
確か今日は4月23日だったような・・・。あぁ、そういえば今日は誕生日だったなぁ。
あまりにも忙しすぎて忘れていた。
最近早起きが続いており、人員もこのご時世のお陰で意図的に減らされてしまい、だいぶ疲れが溜まっていた。
もうすぐ今日が終わるのに何もなく、いつもどおり過ごしてしまったなぁ・・・。途中で酒でも買っておけば良かった。
しばらく時間が経っていたようだ。
ふとまぶたを開けるとだいぶあたりが暗くなっていた。
気づかないうちに失念していたようだ。
慌てて荷物を掴み、家路に向かおうとする。
と、なんとなくいつもの風景と違う感じがした。
(こんな建物あったっけ・・・)
不思議な感覚に襲われながらもいつものように帰ってみた。
「ない、なぁ・・・」
家がないのだ。アパートごと。
自分の感覚は正しかったようだ。
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