ニ 少ない系

「――きゃあっ! こ、これ、あんたの脚、片方写ってないよ!?」


「お、おい! 俺の右腕写ってないぞ!? ……これってもしかして、こっちの腕、怪我するから注意ってことか!?」


 休み時間、何気に友達同士スマホで撮った写真を見て、やはりターゲット・・・・・達が血の気の失せた顔で動揺を隠しきれずにいる。


 ……うん。これもなかなか反応イイ感じだな……上々! 上々!


 こっそり背後から手や顔を出す方法の次に流行ったのは、撮影される人の身体の一部、特に腕や脚の片方が写っていないというタイプのものだった。


 つまり、初期の手や顔が〝一つ多い〟のと逆で、反対に〝一つ少ない〟バージョンである。


 これは、ただ手や顔を隙間から出すのと違い、かなりの高等なテクニックを要する……そのやり方はちょっと説明が難しいのだが……なんというか、まあ、いわば一種のイリュージョンである。


 中には腕や脚ではなく、頭を消すという絶大なインパクトを与えるものをやってのける強者つわものもいたりするが、それこそまさに至難の業だ。


 なので、仕掛けた対象のウケもいいし、うまくできた時にはこの上なくうれしいのであるが、これもやはりそのセンスというものが問われてくる。


 例えば写真に写るメンバーの内、一人だけが片脚消えているのならばちょうど良い怖さかもしれないが、これが三人も四人もだったらどうだろう?


 運よく非常に恐ろしい祟りか何かだと受け取ってくれるのならばいいが、逆にそこまでいくと機械的なトラブルやヤラセかもしれないなどと、一気に興醒めされてしまう可能性だって充分にあるのだ。いや、その可能性の方がむしろ高いといっても過言ではない


 何につけても、やりすぎというものはよくないのである。


 また、この〝一つ少ない〟系においては、仕掛ける相手をよく選び、その相手の特性に合わせて行うというのも効果を最大限に生かすテクニックとして重要になる。


 例えば、バイクに乗っている者は事故に合う確率が比較的高いので仕掛けるのに最適だったり、サッカー部員ならば消すのは腕ではなく利き脚だったり…という具合にだ。


 ま、そんなわけで高度なテクニックと繊細なセンスを要するこの遊びは、ますますわたし達の競争意欲を自然と掻き立て、さらなる段階へと発展していった……。

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