三 首系

「――な、なんだこれ!? い、椅子の下見ろよ! こ、これって、人の頭じゃないか!?」


「ち、ち、ちょっと、ロッカーの上に女の子の首みたいのが……きゃ、キャァァァァーっ!」


 やはり休み時間や部活の間に、遊びでスマホ撮影していた生徒達がその写真を確認して震えあがっている。


 次に流行ったのは、再び原点回帰して〝一つ多い〟バージョンの一種である。


 しかし、今度のは腕や顔ではなく頭をまるごと一つ、しかも、こっそり隙間から出すのではなく、〝首だけがそこにある〟と明確にわかるよう写り込むのだ。


 ある者は床スレスレや高い位置に置いてみたり、ある者は宙に浮かしてみたり……これはこれまでのもの以上に相当難易度の高いテクニックを要するが、それだけに見た者のインパクトも絶大であり、誰もが一度は成功してみたい一枚である。


 また、これは人の写っていない風景写真でも仕掛けることができるため、これまでのものとは違うシチュエーションに応用できるというメリットもある。


「ね、ねえ見て! い、今撮ってみたんだけど、こ、これだけ人の首じゃない!?」


「ほ、ほんとだ! こ、これってやっぱり、うちの学校に伝わる七不思議の、夜な夜な動く石膏像なんじゃ……」


 オカルト同好会の会員が活動の一環として、学校の怪談が囁かれる美術室の調査にやって来ると、スマホのカメラでデッサン用の頭部石膏像を撮って盛り上がっている……。


 なぜならば、棚に並ぶギリシア彫刻を元にした白亜の頭部像の中に、一つだけ人肌の色に黒い髪の毛の生えた女子生徒の首が混ざっているのだ……何を隠そう、私の首である。


 いやあ、これはうまくいった。写真の出来はもちろんのこと、心霊写真が撮れてもおかしくはない場所というロケーションもまさにバッチリである!


 やはり、この困難なミッションをやり遂げた後の達成感は堪らないものがある。


 ほんと、この高等遊戯に参加していて良かったとしみじみ実感する。


 しかし、わたしも成功できて一流の仲間入りを果たしたと思ったのも束の間、ついにはそれをも遥かに凌駕する、究極形とでもいうべき方法を試みる者が現れた……。

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