心霊写真ごっこ

平中なごん

一 多い系

「――きゃっ! なにこの手!? だって、こんなとこに手があるの位置的におかしいよ!」


「そ、それにどうして偶数じゃなく奇数・・なの!?」


 ふふふ…しめしめ。うまくいった……。


 卒アル(※卒業アルバム)に載せるため、今しがた撮ったばかりの記念写真をスマホで確認し、蒼い顔をしている彼女達を見てわたしは密かにほくそ笑む。


 コートに居並ぶバドミントン部三年女子の腕の隙間からは、人数分とは合わない・・・・・・・・・、もう一本の手がにょきっと出ているのだ。


 つまりは、いわゆる一つの心霊写真というやつである。


 今、わたし達の間では、この〝心霊写真ごっこ〟が流行っている……。


 ようは誰かが写真を撮る瞬間にさっと背後に移動し、前の人の肩に手をおいてみたり、並んでいる人と人との隙間から顔を出して写り込んでみたりする遊びである。


ま、誰しも一度はやったことのある、あの悪戯の延長線上にあるものだ。


 で、その撮影した人達が写真見て驚き恐れ慄く様を、素知らぬ顔で眺め楽しむのである。


 一見、幼稚でくだらない悪戯のように思われるかもしれないが、これがなかなかどうしてけっこう奥が深い……。


 まず、撮影する時点で気づかれないようにしなければならないのは言うまでもないが、中には感のいい人もいたりなんかするので、思っている以上にそうとう至難の技なのだ。


 もちろん、シャッターが切られる瞬間に合わせて最高のパフォーマンスを演じなければならないため、敏捷性とリズム感も言うまでもなく大切だ。


 それに、あくまで自然な心霊写真に見えるよう、演出や構図的なものなど、そのセンスというものも問われてくる。


 だから、これはただの遊びでも悪戯でもなく、一種、総合芸術とでも呼べるような域にまで到達した高尚な活動なのである!


 ……なんていうのは、ちょっと言いすぎかな?(てへぺろ)


 でも、そうした芸術にも似た技巧を必要とすることは確かであり、そんな芸術性を内在しているということは、その出来具合に関して競争が起こることも意味している。


 わたしの学校でこの遊びに参加している仲間達の間でも、「いかにバエる心霊写真を撮らせるか?」というバトルが勃発し、そのやり方はどんどんとエスカレートしていった……。

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