水漏れ事件と隣のオッちゃん。(後)
終わるはずだったのだけど!
その日、すっかり疲れ果てて、22時ころだったか、やっと夜ごはんも食べ終わってホッとくつろぎ始めた時、ピンポンが。。。
上の人が、また何か言いに来たのかとスコープを覗くと、お隣のオッちゃんが視界の下の方にちんまりと見えた(すっごい小柄で、わりと親しくしてたオッちゃん)。
えっ!?
騒ぎを聞きつけて確認に来たか、それとも、もしかしてオッちゃんの部屋も密かに被災してたの!?
私は慌ててドアを開ける。
小柄なオッちゃんの、パッチリクリクリしたかわいらしい目が二つ、隙間からのぞいて、それだけでちょっと和む私。
すると、オッちゃんが一言、「あのぉ、水…」と言う。
水?
ってことは、やはり、「ひそかに被災」の線なのね。
しかし、その次の言葉は、意外なことに「水、出ます?」だった。
水出ます? って訊くってことは、オッちゃんの部屋は水が出ないの??
私の頭の中で、目まぐるしく今日の情景がフラッシュバック。水道管の元栓についていた部屋番号が書かれた札の場面で、頭の中の映像が止まる。
あ”っっ!!
声には出さずに、私は叫んだ。
「実は、水漏れ事件があって、管理会社の人が水道の元を一応締めたみたいです(←いや、締めたのは私)。きっとそのあと、開け忘れて行ったんですねっ!」
と、私はとっさに言って、ササッと部屋の外に出て、「これですね~♪」と、妙に慣れた手つきでお隣さんのバルブを回す。
賃貸の部屋の水道の説明が書かれた紙を手に持ったお隣のオッちゃんは、私が回すバルブと紙に印刷されたバルブの写真をなるほど~と見比べながら言った。
「いや~、そうだったんですか。助かりました。どうやっても水が出ないもんで、近くで工事でもしてるのかと思って、お知らせチラシがないか探してみたり、水道局にも問い合わせの電話したり、工具でいろいろいじってみたりして、ずーっと四苦八苦してたんですよ~」と、ホッとした様子。
そして、「あー、よかった。こんなんなら、もっと早く訊きにくればよかったなぁ。ハッハッハ~。ありがとうございましたぁ!」と帰って行きました。(なんて、いい人だ~)。
いや~、申し訳ない(滝汗)
と、私は心の中で謝りながらも。。。
全部私が悪いのに、お隣のオッちゃんが帰ったあと、この罪深いわたくし、自分の罪をタナに上げて、おかしくておかしくて、ずっと爆笑していました。
今でもツボに入ったまま、思い出すと笑ってしまう、なんてイケナイ私。(深く反省)
よく考えてみたら、自分の部屋番号の次の番号は、上階じゃなくて、お隣だった。つまり、自分が101なら、201を締めないといけないのに、私も気が動転してたのか、102を締めちゃったみたいだ。
どうりで、締めてもまったく水漏れの水量に変化なかったわけだ~。
間違った栓を締めたうえに、ウソまでついて、最後に爆笑するとは……私は3重の罪人だ。お隣のオッちゃん、その節は本当にごめんなさい。
でも、この秘密は、一生胸にしまっておこう。
と誓った通り、オッちゃんには言わずに、私は結婚して退室してきた。
というわけで、この水漏れ事件の最大の被害者は、全然関係ないのに妙なトバッチリを受けて、一人で出ない水道と何時間もひそかに格闘していたお隣のオッちゃんだったって話です。。。
しかし、わたし的には、オッちゃんは、おいしいところを最後に全部持って行ったわけで、天然一等賞を差し上げておいたので、きっと許してくれるよね!?
(一生、言えないけど)。
おまけ。
この水漏れ事件を、そのすぐあとに友だちにメールしたら、その返事は「交通事故に遭って、これから病院行く」だった。
その夜、もっとひどい目に遭ってる人がいたんですね〜(汗)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます