04/朝の一時
雨音が家に来て初めての朝は、みぞおち辺りへの違和感と共に始まった。
「ん......何だろう?」
病気だろうか?
そんな疑問はすぐに晴れる。
原因はお面だった。
狐のお面の鼻の所が、丁度僕のみぞおちの部分に刺さっていた。
それが何を意味するのかと言えば、雨音が僕にぴったりくっついていると言う事だった。
タオルケットしか掛けていなかったから、寒かったのかも知れない。
「やっぱり布団で寝るべきだったな。」
今からでも布団に入れてあげようと抱き上げると、雨音身体がビクッと跳ねた。
起こしてしまっただろうか?
お面越しだとどうもわからない。
寝ているのだから外して確認する事も出来なくはないけれど、頑なに隠したがっていた物を勝手に見てしまうのも良くない気がする。
仕方ないからお面越しに、顔をじっくり見てみる。
やっぱりわからない。
どうしたものかと悩んでいる所で、獣特有の三角の耳がピコピコ動いているのに気が付いた。
「あれ?耳?」
耳なんて昨日生えてただろうか?
いや、尻尾があるのだから耳があっても別に何も可笑しな話ではないけれど......
「雨音、起きてる?」
余りにも耳がピコピコ動く物だから、もしかしたらと、そう聞いてみる。
初めは全然動かなかった。
耳と尻尾以外は。
でも、しばらくしてから、雨音はゆっくり頷いた。
「おはよう。」
と挨拶して床に下ろしてあげる。
朝の挨拶をしても、やっぱり雨音は何も言わない。
そのかわりに、返答するように大きく一つ頷いた。
カーテンを開けると日の光が部屋に入って来て眩しい。
良い天気だ。
寝惚けた頭でそんな事を考えていると、服の裾を雨音が引っ張る。
「どうしたの?」
引っ張られるままに雨音に付いて行くと、キッチンの前で止まる。
お腹が空いたのかな?と思ったけれど、違った。
炊飯器はご飯を炊き終えていて、コンロには出来上がった味噌汁が入った鍋と煮物が入った鍋が良い匂いを漂わせていた。
「もしかして、雨音が作ったの?」
そう聞いてみると、雨音が自慢げに胸を張って頷く。
僕が寝ている間に作ってくれていたのか。
誰かにご飯を作って貰ったのなんていつ以来だろう。
こんなに嬉しい事だったかな?
自然と笑みが溢れた。
「ありがとう、雨音。」
感謝の言葉を伝えると、雨音はもう一度大きく頷いた。
「所で、僕より先に起きてたのに、何で一緒に寝てたの?」
素朴な疑問を口に出すと、雨音は何処か気まずそうに視線を逸らした。
何だろう?起こそうとして一緒に寝ちゃったとかだろうか?
まあいいか
「ご飯、食べよう。」
二人で朝ご飯を食べる。
雨音の作ったご飯は、何だか優しい味がした。
そうだ、今日は雨音の服を買いに行こう。
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