03/一日の終わり

なんやかんやありつつも夜。

雨音の事は結局わからない事だらけだけれど、でも害のある存在ではない事はわかった。

ちなみに今は晩ご飯を食べ終えて、二人でテレビを見ている。

毎週やっているバラエティ番組を、雨音は微動だにせず見ている。

真剣に見ているのか、はたまた興味はないけどとりあえず眺めているのか、正直僕には判断出来ない。


「雨音、面白い?」


と聞いてみると、雨音は困ったように首を傾げた。

興味がない訳ではないけれど、しかし面白いと言うわけでもないようだ。

もしかしたら、テレビ自体が珍しいのかも知れない。

そうしてしばらく二人でテレビを見て、気が付けば結構いい時間である。

明日はまだ休日ではあるが、別段起きてまでやる事もないため、そろそろ眠る事にする。


「雨音は布団を使って。」


畳んでおいた敷き布団を敷きながら、僕は雨音にそう提案した。

雨音はこくりと頷くと、敷き終えた布団の上で丸くなる。

とても動物っぽい。

丸くなった雨音に掛け布団を掛けてから、次は自分の寝床を作る事にする。

家には来客用の予備の布団なんてないから、座布団数枚をくっつけて敷き布団の代わりにする。

掛け布団はタオルケットで大丈夫だろう。

試しに横になってみる。

寝心地は、まあそれ程良くは無いけれど、眠れなくも無さそうだ。


「それじゃあお休み。」


部屋の明かりを消して、即席で作った寝床へと向かう。

目が暗闇に慣れていないせいで、少しふらつきつつも何とか寝床に入る。


「ん?」


入ってすぐに違和感に気付く。


「雨音さん?何でこっちに来てるの?」


僕の寝床には既に先客がいたのだった。


「もしかして布団はお気に召さなかった?」


ようやく暗闇に慣れてきた目が、雨音が左右に小さく首を振るのを確認した。


「なら何で......」


小さな手が、僕の腕を触った。

少しだけ震えているのが伝わって来る。

暗闇が怖いのだろうか?

触ってきた手を優しく握ってみる、一瞬驚いたようにビクッと動いてから、その小さな手も優しく握り返して来た。

震えはもう止まっていた。

安心してくれたのだろうか?

これなら、二人で布団を使えば良かったな。何て。

そんな事を考えながらも、仕方ないから今日はこのまま眠る事にした。

少しずつ薄れて行く意識の中で、思い出していたのは初めて会った時の事だった。


「やっ......ぱり、泣いてた......の......かな......?」


雨の中、濡れながら一人ぼっちで佇むのって、どんな時なのだろうか?

そんな事を考えているうちに僕は眠りに付いていたのだった。

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