第28話 アシスタント面接
雑誌に作品を掲載するためには、1人だけだと作業量がとても多くて大変だから、アシスタントを雇うことに決めた。まだ雑誌に掲載する予定が決まっているだけだが将来に備えての準備をしておく。
仲里さんが既に色々とセッティングしてくれて、アシスタント候補の中から何人か選んだ人が今日、作業場へ面接に来てくれる予定になっていた。仲里さんと一緒に、今か今かとアシスタント候補の到着を待っていた。
ちなみにこの作業場というのは、僕が漫画家として活動するにあたって借りる事にした部屋である。その部屋は高層階にあって、ベランダからの見晴らしが良かった。
何人か、アシスタントに入ってもらって作業机を並べて置いても十分なスペースのある広い一部屋がある。
この場所は作業場用としてだけに使う予定で、作業が終わったら近くにある自宅に帰って、そこで母親や姉さんたちとの暮らしを続けるつもりだった。
個室の中に1つ、休憩用にベッドも置いてあるので一泊する事も出来る。休憩用に置いたベッドを利用しすぎて実家に帰らない日々が続いた、なんてことにはならないように注意しないと。働きすぎないように、自宅にもちゃんと帰る。
僕の借りたマンションというのは、この辺りでは一番にセキュリティ設備が良いと言われている物件らしい。高校を卒業した後すぐの若者が借りるにしては、家賃代がかなり高くて豪華な部屋だった。キッチンやダイニングもあって、お風呂もちゃんとある。
オートロックと防犯カメラが設置されていた。そんなにセキュリティ性が高くて、防犯対策が充実しているような部屋が、作業場としてしか使わない場所に本当に必要だったのかな。僕はそう思ったけど、仲里さんと家族からはセキュリティがしっかりしている所じゃないと、部屋を借りる事を許可をしてもらえなかった。
もう一つ思ったのは、部屋が広すぎる、ということ。もう少しばかり小さめの部屋でも良かったのではないか。
漫画家としてデビューをすれば、すぐにお金を稼げるようになるという仲里さんの将来の見通しがあったのと、男の子なのだからセキュリティは十分すぎるぐらい警戒しておいたほうが良いという母親からのアドバイスがあって、この部屋に決まった。
同人活動で今まで稼いできたお金があったので、家賃は自分で問題なく支払える。自宅から歩いて10分もしない近所なので、家から通うのが非常に楽なのも良い。
この部屋を選んだのは自分たちのアドバイスがあったからだと言って、この部屋の家賃支払いを申し出る仲里さんと母親。2人の説得が、実はかなり大変だった。気を抜けば、過剰なまでに僕の世話を焼こうとしてくる仲里さんと母親たち。
姉さんたちも地味に世話好きのようだし、僕の周りには甘えさせてくれる人が多く居た。あまり甘えすぎるのも良くない。とは言いつつ、色々とお世話になりっぱなしなので今更な話ではあるが。とにかく、この作業場について家賃支払いは全額、僕がお金を出していた。
「もう、そろそろかな」
「来ますか?」
「うん。来ると思いますよ」
腕時計を確認しながら、仲里さんが言う。丁度のタイミングで、ピンポーンというインターホンの音が部屋の中に鳴り響いた。
誰か来た、来客を知らせる音だった。部屋に備え付けられているモニタを見て誰が来たのか確認が出来る。
マンションのエントランスに設置されているカメラから、お客さんの顔を確認することができる映像が送られてきた。インターホンのモニター画面には、2人の女性が映っていた。下で待っているようだ。
「彼女たちが、面接を受けに来てくれた?」
「そうです」
尋ねると仲里さんは頷いて、そうだと答えてくれた。
エントランスで立って待っている彼女たち2人が、今日の面接を受けに来てくれたアシスタント候補の女性たち。僕は仲里さんから事前に少しだけ、彼女たちの情報を教えてもらっていた。
1人は、
僕と同じように、高校を卒業した後すぐにデビューした人らしい。まだまだ年齢も若くて将来も有望。整った顔、背が高くてショートヘアの似合う、活発そうな女性である。
そして、もう一人は
彼女は色々な漫画家さんのもとで、多くのアシスタント経験を積んできた、という経歴を持った人物だった。世間でも有名な作品で、僕も聞いたことがある漫画制作に関わったこともあるそう。
二階堂さんとは反対に、背の高い女性が多いこちらの世界の女性にしては珍しく、甲斐さんは子供のように背が低い。髪も、腰まで伸びるロングヘア。見た目だけだと幼く見えるが、実は年上で経験豊富らしい。
なんだか容姿が対照的で、デコボココンビという言葉を思わせる2人の女性たち。彼女たちがカメラを覗き込んでいる様子が、バッチリとモニターに映っていた。早く作業場に招き入れよう。
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