第11話 掲示板の騒動
281名無し
この画像の詳細を知ってる人おる?
教えてエロい人
>http://xxx.xxx.xxx
突然現れた、掲示板の住人たちに問いかける書き込み。テンセイの初作品である、同人誌のページをスキャンして誰かがネットに上げた。それを偶然拾ったけれども、偶然だったから詳細が分からない書き込み主。
絵のクオリティは高く、ネット上に落ちいてた画像を見ただけで欲しいと思った。それで、掲示板を頼りにやって来たのだった。
エロ情報を収集することに熱心な住人たちが、それを見て一気に返事の書き込みをしていく。だが誰も、画像の詳細について分かる者は居なかった。
それも当然。その同人誌は、名前も知られていない作者が特に宣伝とかもされずにひっそりと、五十冊だけ売り出されたモノだったから。しかも数冊は内部の人たちが買っていたので、世に出回ったのは四十冊程度。だから、掲示板の住人には知られていなかった。
画像一枚から騒動は徐々に大きくなっていき、騒ぎが大きくなってく状況を恐れて画像を貼った人物は何も語らず、黙ったまま去っていった。それで、更に書き込みの速度が加速した。
詳細を明らかにしようと、多数人による書き込みで話し合いが行われた。掲示板の住人により画像に関しての様々な予想が立てられて、調査が行われる。そして遂に、同人誌を販売していた同人ショップに掲示板の住人たちは辿り着いた。
画像一枚の情報から、掲示板の住人たちが力を合わせてようやく発見した。多くの女性たちの性欲を掻き立てる同人誌の正体。誰もが、自分も手に入れたいと思った。なのにショップには、売り切れの表示。
当然のように問い合わせが殺到する。この同人誌を描いた作者は、一体誰なのか。本の在庫は残っていないか。いつ再入荷する予定なのか。その他に、テンセイという作者が描いた作品は売っていないのか。
数百件もの問い合わせをドンと、一気に受け取ることになってしまったショップ。テンセイ同人誌の担当者は、こうなってしまうかもしれないと少し予想をしていた。けれど起こって欲しくはなかった事態。それが起こってしまったのかと、苦虫を噛み潰したような顔で対応することになった。
ちょうどその頃、テンセイという名で同人活動していた北島タケルもタイミングが悪かった。彼は間近に控えていた学校の定期試験に集中していて、同人ショップから送られてきた増刷依頼のメール連絡を意図せず無視してしまった。
まさか、そんな事態になっているとは露知らず。五十冊も納品していたから、売り切れるのは少なくとも、一ヶ月ぐらいはかかるだろうと勝手に予想していた。それで学業の方に集中していた。
メールを送るが、連絡が取れなくなってしまったテンセイ。他に連絡を取る手段が無い。同人ショップの担当者も独断で動くことは出来ない。その結果、出来ることは作者の返信を待つだけである。
できる限りの説明をホームページ上に掲載するぐらいしか出来る行動は無かった。再入荷の予定は確認できず未定としか答えられず、作者の情報について教えることは当然出来ない。
注目度が非常に高い中、情報が解明されずに謎のまま。話し合いは加熱していき、掲示板の住人たちが様々な憶測を立てる。
画像を見てみると、新人とは思えない非常に高いクオリティ。それなのに、今までなぜ世に出てこなかったのか。
作者の情報を公開できない理由とは、何なのか。もしかして既にデビューしている漫画家だから?
入荷の予定が未定なのは何故? 新人とはいえ、あれほど絵の上手い作家の作品を宣伝しなかった理由は? むしろ、あれほどの実力の持ち主ならばちゃんと宣伝して本を売ったほうが儲かるのではないか。それなのに、なぜ売ろうとしないのか。
***
「……ん? あれ、もう売り切れたのか」
ネットショップから、本の完売を知らせるメールが送られてきていた事にようやく気が付いた。メールの送信日を見てみると、1週間ぐらい経っている。学校の試験があったので、しばらくパソコンに触っていなかったから今まで気が付かなかった。
メールには、数万円の売上があったと書かれていた。そこから、作者の受け取れる金額の詳細が書かれている。思っていた以上に、中々の収入だった。
その後に、何度も増刷依頼の連絡がメールで送られてきていた。増刷の依頼とは、やはり中々の売上だったのかな。評判はどうか。
エゴサーチをしてみて、本の評価でも見てみようかな。辛辣なレビューがあったら心が痛くなるかもしれない。だけど、これも漫画家として更に成長していくためには必要なことだろう。
誰か、初作品の感想について書いてくれているかな。そう思ってネットで検索して調べてみると、とある掲示板が騒がしくなっていることを知った。
伝説の同人誌? そんなものが話題になっているのか。それについて、話し合いが行われているようだが一体。どんな同人作品なのか興味がある。更に調べていくと、一枚の画像に辿り着いた。
「ぇ? これって……」
***
その後、僕は色々と調べて状況を把握した。それから、パソコンの前で頭を抱えてどうするべきかを悩んでいた。
「まさか、こんな事態になっているなんて……」
とりあえず、気を取り直して。
まず、無視して数日間放置していたネットショップへ謝りのメールを送らないと。僕は謝罪の文章を考えながら、速やかにキーボードを叩き始めた。
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