第10話 思い思いに
勇士は、朝早く街の散策に出ていた。
ベルの言葉が、忘れられずそのまま朝を迎え、気持ちをリセットする為の息抜きも兼ねて、するとタルタロス程では無いが、それなにり大きな建物を見つける
「ここも、まあまあ大きな建物だな、これも奴隷を扱ってるのか?」
勇士は、確認する為に近づくと、子供達の声が聞こえてきたのだった。
「ん?幼稚園みたいなものか?子供の声が沢山するが」
確かめるべく、ノックをして扉を開ける
ーーーーそして。
「いってぇなぁ!」
強烈なスカイアッパーだった。
力の抜けていた勇士の顎にもろに入ったその拳は数秒意識を刈り取っていた。
「すっ、すまない!しかし貴様が悪いのだぞ」と女は言う。
確かに服を脱いだ勇士にも非がある事はたしかであった。寧ろ、それこそが非なのだが、しかしその選択を選んだ事によってこうして会話が生まれたと考えれば功を奏したのかもしれない。
でなければ、あのまま追い出されていた可能性もあったからだ。
そして、勇士は服を着てここに来た経緯を改めて説明した。
「と言うわけで、たまたまここに来ただけなんだよ。それに初めて来たからどこに何があるかなんて知らなかったんだ」
「そうであったのか....すまない」
申し訳なさそうに謝罪をしている女に俺も悪かったと返事をして共に自己紹介をした。
「私は、エリシオン王国の騎士団副団長アルサーだ。そして、ここが孤児院で私の育った場所だ」
「俺は、勇士だ。冒険者だ、よろしく。仲間があと2人いるが今は宿屋にいる」
「あ、あの....」
するとテレサも会話に参加した。
「私が、この孤児院の院長のテレサっていいます」
話によれば、2人は所謂幼馴染みらしい。
しかし、貴族によってアルサーが引き取られてからはこうして大きくなるまで別々に暮らしていたが、テレサが院長になった事を聞きつけて、こうして足繁く通っているのであった。
「じゃ、この子供達も貴族に引き取ってもらえるのか?」
勇士が問いかける、すると2人は、視線をざげテレサが答えた。
「いいえ、この子達は魔力が少ない子が多いので、奴隷になる事になります」
なんとなく、そうでは無いかと勇士は思っていたが、その予想は的中した。
「エルサーは、貴族なんだろ?引き取ってあげられないのか?」
「それが、出来るなら私もしているに決まっている、まだ私にはその力はない」
悔しげな表情を隠す事なく浮かべるアルサー
「じゃあここの子供は全員奴隷になるのか?」
「えぇ、そうなります」
「いつだ?」
「え?」
聞き返すテレサに勇士は
「いつ奴隷になってしまうんだ?」
「男の子は10をこえたら、そして女の子は初潮を迎えたら奴隷になります」
見渡すと、それに近い男の子がちらほらと見受けられ女の子はよくわからない勇士であった。
まさかアルサーとテレサは勇士がこれからやろうとしている事に、気付くはずもなく
質問の意図がわからない気分になる
「どうしてそんな事聞くのですか?」
「いや、何もしらねぇから気になっただけだ」
「まぁ良いではないか、私達もご飯にしようではないか」
手を叩き、アルサーは2人にサンドイッチを配った。
それ以上詳しい事を話す事なく、食べ終わり少し子供達と遊んでからこの場を去る事にした。
「やっぱり変な人だったね」
テレサは、勇士が去るとクスクスと小さく笑いながら言った。
「何がおかしいのよ」
「だって、いきなり裸になったと思えば、子供の心配したり、最後はあんなに楽しそうに遊んで帰って行ったのよ?」
「それもそうね」
本当に変な奴だとアルサーも口にして2人は、笑いあった。
不思議な出会いに、不思議な男に。
そして、アルサーも、強く思った。
子供達をこの手で、守りたいと。
その手は小さくも力強く握り込まれる
同じ想いの2人は、思いを知らぬまま出会いを果たしたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます