第4話 鉄拳制裁
「おい、待てよ」
聞き覚えのある声だった。
ギルドを後にしてワイバーンがいる山岳地帯に向かう途中、ドルフ王国を出て直ぐの事だった。
ギルドでベルに対してちょっかいを出してきた男とその仲間3人、合わせて4人がそこにいた。
声を出した男は剣士、そして後方に魔導服を着た男が2人と重戦士の男1人だった。
「あ?またお前かよ」
「さっさとその女寄越しな、痛い目に遭いたくなかったらな」
国外は無法地帯だったのだ。
略奪の類も黙認されており、冒険者同士で有ればそこに保証は無かった。
冒険者以外に対しての犯罪行為を行えば、ギルドカードに烙印があらわれ、討伐対象になる。しかし冒険者同士ではそれがなかった。
つまり、この場に置いて法律は存在しなくなるのだった。
「はっ、男4人で来てその態度かよ。かっこわりぃな、ベルちょっとアイツらにお灸を据えてやるから待っててくれ」
「手伝わんくてよいよか?」
「あぁ、大丈夫だ!」
勇士は先に仕掛けていったのだった
「舐めやがって、やれお前ら!」
重戦士の男が前方に構えて向かい打つ構えをとり、その後方で魔法使い2人が詠唱を始めた。
そして、重戦士の男が魔法による威圧をした
「はぁ!!!!」
対象より、魔力の低い相手に対しての行動を止める威圧に対して、勇士は直撃し動きを止められそうになるが、それを拳で叩き割った。
「なっ!?」
目の前で、自分の魔力がまさか負けて居るとは思いもしなかった重戦士は隙を作ってしまう。
その一瞬の隙に、懐に潜り込む勇士
拳に力を込めて、それを鎧を身につけたボディへと叩き込む。
「ぐはっ!!」
その場に、膝をつく重戦士、そして接近戦の為、魔法使いはその攻撃を出来ずにいた。
仲間を巻き込むからだった。
「構うな!魔法を使え!」
剣士の男は、仲間も巻き込むつもりで命令をした。
「フラッシュ!」
「くっ、仕方ないファイアボール」
目眩しの閃光と、火炎弾が勇士を襲う。
しかし、勇士は溶接の仕事をしていた過去があり、その光で何度も目を焼いており光を反射的に交わすのは癖になっていたのだった。
思いもよらぬ経験が勇士を味方する。
そして、向かってくるファイアボールだが
勇士の拳一振りで、無に返す
「はっ、そんなもんかよ」
そう言い、魔導士2人の後頭部を掴み、それぞれの額へと重ねる
すると気を失いその場に倒れる。
「なんなんだ!お前!」
物の数秒で、倒された仲間を前に、驚きはした物の、こんな奴に負けてたまるかと言うプライドの方が上回り、攻撃へと移る
しかし、その剣撃はヒラヒラと勇士に交わされてしまう。
「それが本気か?」
勇士による挑発だった。
仲間に対しての遠慮の無い攻撃に苛立ちを覚えていた。
「な、舐めるなよザコが!!!」
剣に魔力を通し、無数の連撃が勇士を襲う。
「当たらねーと意味ねーな、うおりゃ」
地面に対して拳を叩き込み、その衝撃で巻き上がる土によって剣撃はいなされる。
そして、その土によって視界が無くなる
「く、くそっ、どこだ!!」
「上だよ」
視界を奪った隙にジャンプし、そのまま男の顔へと拳を叩き込んだのだった。
「次は、無いからな」
そう言い、その場を去る勇士とそれについて行くベルだった。
「よかったのかの?」
何の事かさっぱりわからない勇士は聞き返す。
「何がだ?」
「倒した敵のものは自分の物にするのが常識じゃろ?」
「そう言う事か、いや俺はそんな事しねぇよカッコわりぃ」
「そうなのか?よくわからんのぅ」
「仲間を見捨てるような奴らから奪った物で、楽しく生きてけねぇだろ?」
「ふむ、それもそうかの?」
「あぁ、だから俺はそんな事しねぇ」
ベルにとっての常識は、あまりに勇士の持つ常識とは違うと思うのだった。
殺されていたかもしれないのにその相手に対し生かしたまま、身ぐるみも剥がさない勇士の行動は余りに甘く、情が過ぎるのであった。その甘さに後悔しなければよいのだがと思うベルだった。
ワイバーンの住む地とされる山岳地帯へと向かう2人
「てかよ、ベルは空飛べるんじゃねぇのか?」
「飛べぞ?妖精じゃからの当たり前じゃ」
「なら俺背負って飛んでくれよ」
「アホか!重くて飛べるかいな!」
「魔力でどうにかなんねぇのか?」
「んー無理じゃのぅ〜魔力を持たぬ無機物に対しては魔法で重力制御は可能じゃが、魔力を持つものに対しての制御は厳しいのぅ、テイムとか使役や隷属や主従となれば別じゃが、質量変化は無理じゃの」
「ややこしいなぁ、ルールがよくわかんねぇ」
「まぁ直で感じていって理解していけば追々わかっていくんじゃなかろうなの?経験というやつじゃよ」
「それもそうだな」
うむ、経験じゃと胸を張りながら言うベル
その破壊力は凄まじい物のはずなのだが、何故か勇士は気にする事なく会話を続ける
「にしても、そんだけべっぴんなのに、その喋り方どうにかなんねぇのか?もったいないぞ」
今まで、言わなかった勇士だが、折角の美貌に対しておじさんの様な口調はどうも違和感を感じていたのだった。強制はしないとしても、もう少しあるんじゃないかと思いつい口にしたのだった。
「な??変なのか?」
「変だろ」
「嘘じゃい!誰も変とは言うとらんかったぞ?」
「一応、ベルも王だったなら、誰もいわねぇだろ?」
ムッとしながら
「一応じゃないわい!ま、それもそうかの?しても、他の王もこの様な喋り方じゃろう?」
「他の奴に会った事ねぇからしらねぇけど、まぁ王様の喋り方って言えば、何と無くそんな気もするな」
「じゃろうが」
そこに性別は関係ないのかよ、と思う勇士であったが、ベルがそれで満足しているのならそれ以上は言わなかった。王の喋り方がさぞお気に入りだったみたいだ。
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