第3話ドワーフの街


「おおっ、街が見えたぞ!」


森を抜けて数日、遂に街までたどり着いた勇士たちだった。


「久しいのぅ」


「来たことあるのか?」


「まぁ昔の事じゃ、今はどうなっとるかもわからんよ、じゃがこのまま妖精の姿で入ると騒ぎになるやも知れんのぅ」


よし、と声をだしベルは人型へと変化したのだった。

 見た目は20歳くらいの大人びた姿に変わり、ショートだった髪の毛は腰まで伸び、見事な女性へと変化したのだった。


「おぉ、偉いべっぴんになったなぁ」


その余りの美しさに勇士もつい見惚れてしまう。


「人になるのも久しいからどうかと思ったが、なかなかいけておろう?」


「あぁ、ムラつくぜ」


「なっ!?そんな目で見るな!」


 勇士の嫌らしい視線に、バッと身体を隠してしまうベル

 その目は足元から舐めるようにジロジロと凝視していた。

 勇士もやはり男なのだ。

その美貌は見てこその者なのだと、見ない方が失礼なのだと言わんばかりの目の凝らし方だった。


「まぁ行くか」


 と切り替えて進み出す勇士。

思いの外、あっさりと切り替えたのでベル自身も実はその見た目に自信があった為、ムッとして後に続いた。



ドワーフは統べる国家、ドルフ王国

ガッチリと筋骨隆々な体格の男達が多く、やや低い背丈を補う程の力と魔力を持っていた。

 そして、ドワーフはその見た目とは裏腹に細かい緻密な作業も得意としており、鍛治職人や防具や衣服の製造をしており、その貿易は各国からも重宝されていた。

 その街並みも美しく、製造を主に行なっている工業地帯と美しく建造された街が2分されており、国への入り口は工業地帯とは反対にある街から入ることになった。

 入国審査は、名前と種族を書くだけで入る事は可能だった。文字は何故がすんなりと書く事が出来た。しかし入国税が必要だった。


「あ、金ねぇわ俺」


「じゃろうな」


気前よく、ベルが払ってくれたのだった。


「それにしても、こっちの言語も俺が使ってたのと同じなんだな!びっくりしたぜ」


「そうなのか?凄い偶然じゃのぅ」


「あぁ、ラッキーだせ!しかしあれだな、金は必要だな?さっき出してくれてありがとうな」


「たやすいことよ、ユージを見た時から無一文なのはわかっておったからの」


クククと笑いベルは続けた


「差しあたっては、ギルドに行って冒険者登録でもするかのぅ」


「そんなのがあるのか、ならさっさと済ましちまおうぜ」


そう言いギルドへと向かう2人


 ギルドとは、各国の冒険者が集いクエストを受けられる場所になり、その報酬で生計を立てる者が冒険者なのだ。

 生死の保証は無く、薬草の採取から魔物の討伐まで様々な種類のクエストがあるのだ。

 ギルドの建物は圧巻だった。


「こりゃでけぇな」


 国王が住う城を除いて、最大の建造物だった。高さもさる事ながら、敷地の広さも莫大だった。そこには、魔物の解体施設から武器屋、武具屋や宿屋など冒険者が生活できるようになっていたのだ。

 ギルドに入るなり、中には沢山の冒険者がいた。人間やエルフ、ドワーフ、獣人が武器、防具を装備し依頼板の前でクエストを探したり、テーブルで会話をしたりしていた。


「おいおい、これは上玉じゃねぇか」


 1人の人間が、ベルを見るなりちょっかいをかけてきたのだった。


「どこの世界でもあるんだな」


と勇士は、呆れながら口にする


「何言ってんだお前?そんな事より、おねぇちゃんオレ達と一緒にいかねぇか?」


 勇士の事は軽くあしらわれ、ベルへと視線を向けるのだった。

 それもそのはず、勇士の見た目はまるで冒険者ではなく、スニーカーにラフな格好だったのだ。

 そして、男がベルへと手を伸ばしその腕を掴もうとした


「おい、その辺にしとけや?俺の女だぞ」


殺意を込めた勇士の視線が男へと突き刺さる


「あ?オレとやるってのか?」


 男は剣を構えて、勇士に対して戦闘の意思を見せた。

 しかし、勇士はその挑発には乗らずに、ベルの手を引き受付まで行くことにしたのだ。


「はははっ!ビビりやがって後でその女貰いに行くからな」


 男は興が覚めたのか、いつでもやれると思ったのか、その場を後にしていった。


「わりぃな、迷惑かけた」


「いや、いいんじゃよ。しかし俺の女とはのぅ」


「ついつい、そう言ってしまったんだよ、気にすんな」


 そう言いながら、前を向き自分の言った言葉を思い出し耳を赤くして頭をかく勇士だった。


「かっこよかったです!」


カウンターに着くと受付の女性は勇士に対しキラキラと目を輝かせながらそう言い放った。


「そ、それはどうも」


 勢いの余りに、言葉に詰まりながら返事をする勇士だか、咳払いをして冒険者登録に来た事を伝える


「では、こちらに名前をお願いしますね」


「わかった。ベルも登録するんだろ?」


「そうじゃのぅ、名も貰うたししておく事にするかの」


「それでは、魔力測定させて貰いますので、この魔法石に触れて貰えますか?」


そう言い勇士は何食わぬ顔で魔法石に手を乗せる


(ユージ、何しとんじゃすました顔で手のせとる場合か!)

(あ、まずかったか?)


 頭を抱えたくなるベルだが、勇士に触れ若干の魔力を注ぎ、何とか事なきを得たのだった。


(先が、思いやられるのぅ)


そう、心の中で言わずにはいられなかったベルだった。

ベルも続いて、魔力を流し登録を無事に終えたのだった。

魔力量が多いので、騒ぎになる事を恐れ、ベルは調整し魔力を流していた事を勇士は知る由もなかった。


「それでは、お二人のギルドカードになります。最初はGランクからになりますが、クエストの報酬を得る度にランクが昇格していきます。失敗すれば違約金を支払ってもらう事になりますので、気を付けてくださいね?

ランク問わずクエストは受けられますが、高ランクになるほど報酬も違約金も大きくなりますので注意してくださいね!それでは私、アリシアからの説明は以上です!頑張って下さいね」


アリシアの説明が終わり、早速クエストを受ける為に依頼板の元に来た。


「んーやっぱりサクッと稼ぎたいなぁ」


「そうかの?金ならワシも持っとるんじゃがのぉ」


「女に出させてるなんて知られたら恥ずかしいだろ?」


「そう言うものかの?」


「あぁ、俺の住んでた所じゃ、男が女を支えるのが当たり前だったんだ。だから男が稼いで女が家事をするのが普通なんだよ。だから頼ってばっかじゃいられねぇ」


ふーんと相槌をするベルだが、妖精の常識とは違い理解までには及ばないのだった。

そして、この世界では、多くの魔力を持つ者が強者たる故、女性の方が強くなる事も多く存在するのだった。


「よし、これにしよう」


勇士はそう言い、掲示板にある依頼にギルドカードをかざし契約した。ギルドカードには魔力常駐型の小さな魔石が埋め込まれており、魔力のない勇士でも使用が可能だった。


「して、ユージよ、何にしたのじゃ?」


「ワイバーンの討伐だな!カッコ良さそうだしな!」


「なっ.....もう何も言うまい....」


「こいつ捕まえたら空飛べるんじゃねーか?」


 ベルは、もう気にする事をやめたのだった。そして、もっとしっかり目を光らせるべきなんだと再確認したのであった。


「ランクBだからまぁまぁ強そうだからな、乗りこなせたらカッコいいな」


「そうじゃのぅ」


呆れながらに返事をする。


そしてワイバーン討伐?捕獲?へとギルドを後にしたのだった。

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