本当の気持ち

暁斗

10分劇用①


――翔と香奈が2人で話している。

翔・香奈 アドリブ (香奈が翔にデレてる感じでお願いします)

――信哉と奈穂が入ってくる。奈穂はうつむいている。

信哉  「翔!あ、香奈も一緒だったのか。」

香奈  「なによ、一緒じゃ悪い?そっちだって奈穂と一緒じゃない。」

信哉  「別に悪いなんて言ってねえよ。なあ、翔。日曜さ、ゲーセン行こうぜ。俺、あれから腕上げたんだぜ!」

翔   「行く行く!またコテンパんにしてやんよ!」

香奈  「ちょっと、私とのデートの約束は?」

翔   「あ……そうだった。ゴメン信哉!というわけだから、また今度な!」

信哉  「わかった。彼女は大切にしてやらないとな。」

――拳を突き出し合う。

香奈  「そういうこと、まー男同士の友情もいいけどさ、日曜は恋人1年の記念日なの。だから邪魔しないでよね。」

信哉  「はいはい、お熱いこって。」

香奈  「そういうあんた達はどうなのよ?」

信哉  「お、俺達のことは別にいいだろ」

奈穂  「ね、ねえ信哉。」

信哉  「ん?」

奈穂  「あの、あのね……私も、その……。」

信哉  「なんだよ、言いたい事があるならハッキリ言えよ。」

奈穂  「あのね、私も……したい。デート。その、私たちも、もう1年経つし……。」

香奈  「あれ、あんた達も付き合い始めて1年なの?そういえば気が付いたら付き合ってた……って感じだったのよね」

翔   「そうそう、あの信哉に彼女がっ!?ってビックリしたんだよな~」

信哉  「ああ、でもそれは(再来週のことで)……」

香奈  「じゃあさ、ダブルデートっていうのはどう?」

翔   「いいな、それ!みんなで楽しく過ごすって言うも悪くないしな!さっすが俺の香奈ちゃん!」

――奈穂が嬉しそうに信哉を見ている。

信哉  「いや、でも……」

香奈  「なによ、信哉。何か嫌な理由でもあるっていうの?」

信哉  「別にそういうわけじゃ……」

奈穂  「私、行きたい。信哉と一緒に。」

翔   「ほら、奈穂ちゃんだって行きたいって言ってるんだ。どうせ日曜は暇なんだろ?」

信哉  「それは、まあそうだけど……」

翔   「だったらいいじゃねえか。」

信哉  「……わかった。いいよ、行くよ。」

香奈  「よっし、決まりね!それじゃ奈穂、日曜にどこ回るか一緒に決めよう!」

奈穂  「うん!」

――2人が去ろうとする

翔   「(何か思い出したように)香奈ちゃん!」

香奈  「一応言っとくけど、ゲーセンには……行かないからね?」

信哉  「わかってるよ、まったく……敵わないな。」

――暗転

――ショッピングモール、ベンチに4人が座っている。

香奈  「さっきの映画、面白かったね!評判以上だったわ。」

翔   「あれ、信哉どうした?さっきの映画面白くなかったか?それとも3D酔いか!?」

信哉  「あ、いや……別にそんなことは無いんだけど。」

奈穂  「やっぱり、来たくなかった?なんか、最初嫌がってたし……」

信哉  「あー、そんなことないって。俺も楽しいよ。」

香奈  「あーもう、ちょっと翔!ジュース買ってきて!」

翔   「えっ!?」

香奈  「奈穂も翔と一緒に信哉の分、買ってきて。」

奈穂  「う、うん……いいけど。」

――翔と奈穂が出ていく

香奈  「ちょっとさっきから何なの?」

信哉  「なにって……。」

香奈  「嫌なら嫌って最初から言いなさいよ。」

信哉  「別に嫌って事はないさ。」

香奈  「せっかくのデートなのに、あんたが暗い顔してるから、ずーっと奈穂が気を使ってるのよ。気づいてないの?」

信哉  「奈穂はいつもあんなんだろ。」

香奈  「あんたね……それでも本当に奈穂の彼氏なの?奈穂、今日のデートすっ

ごく楽しみにしてたのよ。ちょっとはあんたも気を使いなさいよ。」

信哉  「俺は……別に……」

香奈  「2人と合流したら、そこからは別行動にするから、ちゃんと奈穂のことエスコートしてあげなさいよ。せっかくの記念日なんだから、奈穂を楽しませてあげて!」

信哉  「わかってるよ、俺だって、俺だってちゃんと……!」

香奈  「わかってるならいいわよ。そのかわり、奈穂を泣かせたら、私が許さないから。」

信哉  「(だまって頷く)……。」

香奈  「ほら、さっさと2人を探しにいくわよ。」

信哉  「———ああ!」

――香奈、信哉も出ていく。反対側から翔、奈穂が出てくる。

翔   「香奈ちゃんが好きなのは……こっちだけど、あーこっちも捨てがたいな……」

奈穂  「翔くん、今日はなんだかごめんね。」

翔   「何謝ってるのさ。」

奈穂  「信哉くんもあんまり楽しんでないみたいだし、二人のデートの邪魔しちゃっただけ……みたいになっちゃって。」

翔   「気にする事無いよ。言いだしたのは香奈ちゃんだし、信哉も照れてるんだろ。あいつ、昔っから女の子苦手なんだよ。」

奈穂  「でも、香奈ちゃんとは普通に話すよね。」

翔   「香奈ちゃんは、ほら……ああいう性格だからさ、信哉も気兼ねしないんだよ。」

奈穂  「私、去年ようやく信哉くんと恋人になれてすっごく嬉しかった。でも付き合ってても信哉くんあんまり笑わないし、香奈ちゃんとはすごく楽しそうに話してるのに……私なんかで良かったのかなって、私以外の子の方が信哉くんにとって良かったんじゃないかって、私……自信ないな。」

翔   「奈穂ちゃん……」

奈穂  「ごめんね、暗い話ばっかりで。さ、二人のところに戻ろう!」

――奈穂が持っていた缶を落とす

翔・奈穂「『あ』」

――2人同時にそれを拾おうとしてお互いの頭をぶつけ、倒れる。

奈穂  「あいてててて……ああああああああああ!」

――立ち上がり、倒れている翔を指さす

奈穂  「え、俺?俺がそこにいる……もしかして、俺……死んじゃったの!?」

――奈穂が自分の身体を触り、確認する。

奈穂  「あ、なんかない……(股間を抑えつつ)あれ、でもなんかある……(胸を押さ

えながら)」

翔   「いたたたた……大丈夫、翔くん……きゃあああああああああ!」

――翔が起き上がり、奈穂の胸を手で押さえながら悲鳴を上げる

奈穂  「どどどどうなってんじゃああああ!」

翔   「翔くん?翔くんなの?」

奈穂  「奈穂ちゃん?奈穂ちゃんだよね……もしかして、俺達……」

翔・奈穂「入れ替わっちゃった……?」

――そこへ香奈と信哉が入ってくる

香奈  「あーやっと見つけた!どこ行っちゃったのかと思ったわよ。」

信哉  「どうしたんだ、翔?」

奈穂  「いや、なんていうか、あのーえーっと……」

香奈  「なんで奈穂がうろたえるのよ、変なの。」

信哉  「ほら、立てるか?」

翔   「え、ええ……」

――信哉が手を差し伸べ、恐る恐る掴み、立ち上がる

信哉  「翔、大丈夫か?」

翔   「だ、だだ大丈夫よ、ありがとう。」

信哉  「なんでそんな照れてるんだ?キモいぞ?」

翔   「そそそそうよね。うん、私は大丈夫。」

香奈  「2人とも合流できたし、ここからは別行動にしましょう。せっかくのデートなんだし、お互い楽しまなくっちゃね!」

翔   「あ、香奈ちゃん!ちょ……ちょっと!」

――香奈が翔を連れて強引に出ていく・翔が頑張って奈穂を演じようとする

奈穂 心の声(ど、どうしよう……香奈ちゃんが俺の身体連れてっちゃった……)

信哉  「奈穂、本当に大丈夫か?さっきからなんか様子がおかしいけど……」

奈穂  「えっ?わ、私はいつも通り元気だよー?きょ、今日も信哉とデートできてとーっても嬉しいなぁ~!……なんて」

奈穂 心(あっれー奈穂ちゃんってこんな感じだったっけ?)

信哉  「そっか……なんか珍しいな、奈穂がそんな風に喜ぶのは。」

奈穂  「えっ?」

奈穂 心(やっぱり違ったのかー!?)

信哉  「いつもは俺とデートしてても楽しんでるのかよく分かんなかったし……。」

奈穂  「そ、そうかな~?奈穂はとーってもたのしいよー?信哉と一緒ならど、どこでも、楽しいもん!」

奈穂 心(えぇい、こうなりゃヤケだ!)

信哉  「ホント、今日の奈穂はいつもと雰囲気違うな。俺も元気出てきたよ。ありがとう。」

奈穂  「そ、そう?奈穂嬉しい!奈穂、信哉が喜んでくれてチョー嬉しい!」

奈穂 心(見たか!俺の女子力の高さ!)

信哉  「さっき香奈から怒られちゃったよ。」

奈穂  「えっ?」

信哉  「せっかくのデートだから奈穂を楽しませてあげて、奈穂を泣かせたら許さない……って」

奈穂  「香奈ちゃんがそんなこと……」

信哉  「今のお前になら、俺……ちゃんと言える気がする。」

奈穂  「な、なにを……?」

信哉  「あんまり伝わってないかもしれないけど、好きだ!大好きだから!」

奈穂  「お、おおおおおれ!?」

信哉  「俺、お前だけを見てるから……」

奈穂  「あ、ありがとう……あはは」

信哉  「これからもずっと俺と一緒にいてほしい。」

奈穂  「い、いやぁ~そそそんな!」

――信哉が奈穂に口づけしようとする

奈穂  「あああああああやっぱだめだっ!」

――奈穂が信哉を止める

信哉  「奈穂?」

奈穂  「ごごごごめん!俺……奈穂ちゃんじゃないんだ!」

信哉  「え、何言ってるの?」

奈穂  「信哉、俺!俺なんだよ!俺俺!」

信哉  「新手の俺々詐欺?」

奈穂  「そうじゃなくて!俺だよ信哉!」

――奈穂が拳を突き出し、信哉もつられて拳を突き出す

信哉  「ひょっとして……翔?」

奈穂  「そうだよっ!俺、翔だよ!」

信哉  「な、なななんんで!?えっ?どういうこと?」

奈穂  「お前らと合流する前に奈穂ちゃんと頭をぶつけたら……入れ替わっちゃったんだ!」

信哉  「えええ!?そんなことあるのかよ……」

奈穂  「あっぶねー。もう少しでお前とキスするところだった……。」

信哉  「え、いや……でも、今のお前は奈穂だから、俺は奈穂とキスをすることになるから……でも中身は翔だから、実は翔とキスしたことに……いや……」

奈穂  「それより信哉!さっきはずいぶんと素直だったみたいじゃないの?」

信哉  「いや、だって…いつもとずいぶん雰囲気違ったし、あれならいつもは言えない事もちゃんと言えるかなって……」

奈穂  「おいおい、雰囲気違くなくてもちゃんと奈穂ちゃんに気持ちは伝えないとダメだろ。」

信哉  「そうなんだけど……奈穂なら言わなくても分かってくれるかなって。」

奈穂  「奈穂ちゃん、信哉の彼女であることに自信ないって言ってたぞ。」

信哉  「奈穂が?」

奈穂  「このデートも本当は嫌だったんじゃないかってずっと悩んでたみたいだし。何か来たくない理由でもあったのか?」

信哉  「あぁ……実は、俺達の記念日再来週なんだ。だから、その時にデートしようと思ってたんだけど……」

奈穂  「なんだよ!それならそうと最初から言えばいいだろ!そっか。俺達が騒いじゃったからタイミング逃したってワケか……。」

信哉  「翔や香奈の気持ちも嬉しかったし、断るのもどうかと思っちゃて……」

奈穂  「気にするなよ。俺達親友だろ?彼女どころか、親友にも気を使ってたなんて……俺ちょっと悲しいぞ。」

信哉  「そうだよな。うん、悪かった。」

奈穂  「ちゃんと、言葉にして奈穂ちゃんに伝えてあげろよ。」

信哉  「だな。」

――暗転

香奈  「ねえ、翔!ここに新しいお店出来てる!わぁ~かわいいなあ~!ウィンドウショッピングもたまにはわるくないわよね!」

翔  心(どどどうしよう、香奈ちゃん……私の事、翔くんだと思ってるわよね?)

香奈  「翔?ねえ聞いてる?」

翔  心(翔くんはどうしたんだろう……あああ、翔君どうしてるのかしら。)

香奈  「ちょっと!ちょっと翔ってば!」

――香奈が翔の肩をつかむ

翔   「ヒャイィ!」

香奈  「何なのよ、その女の子のみたいな叫びは。さっきっから呼んでるのに気付かなかったの?」

翔   「あ、ご、ごめんね!」

香奈  「ひょっとして、信哉とゲーセン行きたかったーとか思ってないでしょうね」

翔   「そ、そんなことないわよ、全然!うん、まったくない!」

翔  心(あれー?翔君ってこんなだっけ?)

香奈  「あのね、ちゃんと言っておこうと思うんだけど、私……好きだからね!」

翔   「わわわわわわたし!?」

香奈  「ちょっと、あんた以外誰がいるっていうのよ!」

翔   「そ、そうよね。私たち付き合ってるんだから。」

香奈  「私はね、ちゃんと言葉にして伝えたいって思うの。だって、言わなきゃ分かんない事いっぱいあると思うし……。」

翔   「…………」

香奈  「やっぱり、あの二人気になる?」

翔   「えっ?」

香奈  「信哉と奈穂よ。信哉の様子がおかしいからちゃんと奈穂をエスコートしろって言ったんだけど……」

翔   「香奈ちゃん、私の為に……」

香奈  「別に翔の為じゃないんだけど?」

翔   「あ、そそそうだよね。ごめんなさい。」

香奈  「ほら、信哉って昔っからあんまり素直じゃないところ、あるでしょ?だから奈穂に寂しい思いをさせてるんじゃないかって思うと……ついね。」

翔   「ふ、ふええええん!」

――翔が泣きだす

香奈  「え、な……なんで翔が泣きだすのよ!」

――そこへ信哉と奈穂が入ってくる。

信哉  「やっとみつけた!」

奈穂  「ぜぇ、ぜぇ、探しちゃったよ!」

香奈  「ちょっと、信哉何でこっち来たのよ!別行動にしようっていったじゃない!」

信哉  「奈穂!」

香奈  「奈穂?奈穂ならそこにいるじゃない。」

奈穂  「香奈ちゃん、俺だよ俺!俺は奈穂ちゃんじゃない!」

香奈  「奈穂?何言ってるの!?」

奈穂  「俺は奈穂ちゃんじゃない!奈穂ちゃんはそっちで泣いてる俺の中に居るのっ!」

――泣いている翔を信哉が抱きしめ

信哉  「奈穂、ごめん!俺、ちゃんと奈穂の事見てなかった。今日だって来たくなかったわけじゃないんだ。ただ……俺達の記念日は二人で過ごしたかったなって。」

翔   「信哉……。」

信哉  「奈穂が俺の事好きなのはちゃんと分かってる。寂しい思いさせてごめんな。俺、奈穂なら言わなくても分かってくれるって勝手に信じ込んでた。でも、翔に言われたんだ。ちゃんと言葉にしないとダメだって。」

翔   「信哉、ありがとう。」

――一瞬の暗転

奈穂・翔 「ああ!」

香奈  「今度はどうしたの!?」

奈穂  「もどった……」

翔   「もどったあああ!」

――それぞれ抱き合い、暗転

信哉  「好きだよ、奈穂」

奈穂  「うん!」

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本当の気持ち 暁斗 @akity

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