第10話 【改訂工事前】凶神...傍観する

◆アルグリア大陸暦1538年2月2日 アッバース王国辺境~ミモザの森




「「「グッギャギャギャギャ!」」」「「「グッギャギャギャギャ!」」」

「「「グッギャギャギャギャ!」」」「「「グッギャギャギャギャ!」」」

「「「グッギャギャギャギャ!」」」「「「グッギャギャギャギャ!」」」




「くっ、円陣えんじんを組め!」「「はっ!」」




 巨精霊人ジャイアントの騎士達の3人が、円陣えんじんを組み、緑鬼精霊人ゴブリンからの攻撃に必死に耐えている。




 ふむ、......ところでお前等、王女の側付きの騎士じゃないのか?




 本当に王女を守る気がない、......?






「「「グッギャギャギャギャ!」」」「「「グッギャギャギャギャ!」」」

「「「グッギャギャギャギャ!」」」「「「グッギャギャギャギャ!」」」




「はっ、やぁ! でぇ、やぁ!」




 王女は左手の盾で、緑鬼精霊人ゴブリンをぶん殴り、右手の長剣で緑鬼精霊人ゴブリンを薙ぎ払う。




 そして、緑鬼精霊人ゴブリンの屍の山を、次々と作っていく!






 まあ、王女は職業が姫騎士とは思えない暴れっぷりだ。




 やっぱり、称号《お転婆姫》の効果が凄まじい!




 称号《お転婆姫》の効果は、単独戦闘時能力値が3倍で、集団戦闘時に指揮を執れば部隊攻撃力が3倍!。




 ああ、...でも、王女は多分、...指揮とか執った事ないな、ありゃ~。






「グッフ、......!」




「「ザットス卿!」」




 騎士の爺さんは脱落だな、......チーン。




 たくっ、言わんこっちゃない、...脳筋過ぎるだろうが巨精霊人ジャイアント




 たった4人の巨精霊人ジャイアントで、緑鬼精霊人ゴブリン500の集落に突っ込むとは、馬鹿としか言えない。




 今で、やっと残り半分ってとこか......。






「「「グッギャギャギャギャ!」」」「「「グッギャギャギャギャ!」」」

「「「グッギャギャギャギャ!」」」「「「グッギャギャギャギャ!」」」

「「「グッギャギャギャギャ!」」」「「「グッギャギャギャギャ!」」」




『やぁ! とう! だぁ!』




 妹は楽しそうに、緑鬼精霊人ゴブリンを両手の棍棒で撲殺し捲っている。




 そして、移動しながら、嬉々として緑鬼精霊人ゴブリンほふっていく!






「グッ!」




「ガァッ!」




 緑鬼精霊人ゴブリンの残りが100を切ろうとした処で、遂に巨精霊人ジャイアントの残り2人の騎士が、ゴブリンキングの大剣に薙ぎ払われ、倒された!




 ふむ、何故、...脳筋共は緑鬼精霊人ゴブリン500を、倒せると考えたんだ?




 脳筋過ぎる巨精霊人ジャイアントの騎士達の最後に、合掌! ......チーン。






「「「グッギャギャギャギャ!」」」「「「グッギャギャギャギャ!」」」

「「「グッギャギャギャギャ!」」」「「「グッギャギャギャギャ!」」」

「「「グッギャギャギャギャ!」」」「「「グッギャギャギャギャ!」」」




 そんな中に、新手のゴブリンキングが率いる緑鬼精霊人ゴブリン600程の集団が合流して来た。




 そして、此処の緑鬼精霊人ゴブリンの残存兵力を吸収して、妹と王女を取り囲む。




『シュウゲキシャハ、ヤツラ、ダケカ?』




『アア、ホカハ、タオシタ!』




 ゴブリンキング同士で、意見の交換が行われ、指揮系統は新たに到着したゴブリンキングが執るようだ。




 妹と王女は、本当に状況を理解しているんだろうか?




 王女は側付きの騎士達が倒された事も、気付いていないようだが......。




 憐れな騎士達を不憫に思いながらも、......俺は王女と妹の戦いを見守る。




 俺は自分からは、攻撃はしない。




 “殺られたら殺り返す!”




 それが俺のルールだ。




 俺は、拘りの在る男だ。

 





「ぐっはっ! やっ! てぃ! ぐっばっ!」




 王女にも限界が、そろそろ遣って来たようだ。




 巨精霊人ジャイアントは体が大きい分、弓矢の的としては適している。




 近距離と遠距離の攻撃の防御で、王女は激しく体力を消耗していた。




 単独で多数を相手取る時は、決して足を止めてはいけない。




 色んな意味で、的になるからだ。




 まあ、足を止めても多数を倒せる力量があるなら別だけどな。






『はぁぁぁぁ! だぁ!』




 では、俺の妹は多数を倒せる力があるのかって?




 そんなものはない。




 妹は弱い。




 王女よりも遙かに弱く、体力スタミナもない。




 だが、妹は足を止めない。




 それは俺に取り憑き、俺の戦い方、俺の考え方を理解しているからだ。




 力量が無いなら、力量を手に入れれば良い。




 己の有利な状況を創り出し、敵を誘い込め。




 敵に実力を発揮させる時間も隙も与えるな。




 勝つ必要は無い、生き残る方法を探し、生き残れ!




 此処はレベル制の世界じゃない、してやスキル制の世界でもない!




 レベル・スキルは飽くまでも数字と文言と思え!




 恩恵アシストはあるが、




 レベル数字に頼るな! スキル文言に頼るな!




 頼らずに、飽く事なく足掻き続ける者にこそ、神々から可能性が与えられる。




 此処は模擬現実制シミュレーションの世界、アルグリア。




 アルグリアの神々AI管理脳群は、見ている。




 個体の想いを、覚悟を、行いを。




 そして、授けられる才能可能性は“神々の生き物への願い”そのものだ。





 

『大丈夫、シャンダナさん?』




「ええ、ありがとうメル! くっ、!」




 妹が王女の窮地を救う、そして、足が止まった。




 おいおい、妹よ。




 お人好しは長生きできないって教えただろう?




 ふー、......困ったものだ。




 妹は暫く合わなかった内に、偉くお人好しになってしまったようだ。






『モノドモ、カコメ!』




「「「グッギャギャギャギャ!」」」「「「グッギャギャギャギャ!」」」

「「「グッギャギャギャギャ!」」」「「「グッギャギャギャギャ!」」」

「「「グッギャギャギャギャ!」」」「「「グッギャギャギャギャ!」」」




『やぁ! はっ!』




「メル、撤退出来るか? このままじゃジリ貧だ!」




 王女が妹に、撤退を提案する。




 ほ、ほう、退く勇気もあるのか、......関心、関心。




 だが、もう遅い。




 状況判断が、著しく遅い。





『無理だと思います! 私は出来るけど、シャンダナさんと一緒では無理です!』




 妹は冷静に状況判断出来ている。






「なら、メル! 撤退しろ、この数では体力が持たないぞ! 私の事は気にするな、一人ならなんとかなる!」




 王女は妹を逃がす為に、明らかな嘘を付く。






『せぃ! やぁ! そんなバレバレの嘘に引っ掛かれと、シャンダナさん!』




 だよね、......そんな嘘に引っ掛かる訳ないよね、妹よ。




 心配なんかしてないよ、......本当だよ。






「ふんっ! そうか、バレバレか、ははははは!」




 王女は豪快に笑いながら、緑鬼精霊人ゴブリンを倒す。




 だが、足の止まったを獲物を仕留しとめるのは容易たやすい。




 指揮官がいれば、尚更だ。






『ハジョウ、コウゲキヲ、カケル! タイレツヲ、クメ!』




 ゴブリンキングが、群れを統率しての、狩りの準備を始めた。




 はてさて、妹よ。




 お前はどうするつもりなんだ?




 王女を助けて、一緒に死ぬつもりではないよな?




 え、どうして妹達を助けないのかだって?




 だって、助ける必要がないからだ。




 妹も、王女も、己の意志で戦いに臨み、緑鬼精霊人ゴブリンを殺した。




 ならば、緑鬼精霊人ゴブリンに殺されても仕方ないだろう?




 殺ったら殺られる、当然のことわりだ。




 折角、再会した妹が死んでも良いのかだって?




 言い訳あるか、そんなのは決まってるいるだろう!




 だが俺は手を貸さない、妹には教えてある。




 “殺るなら、殺られる、覚悟を持って殺れ”と。




 妹の選んだ道だ。




 俺が手を貸してはならない。




 それに妹は、俺に助けを求めたか、求めてないだろう?




 つまり、そう言う事だ。




 くっ、......決して我慢しているんじゃない。




 勿論、助けを呼ぶのを待っている訳でもない。




 待ってなんかいないからな! 本当だぞ!




 俺は、妹に甘い男シスコンだ。






 妹からの声掛けヘルプミーを待つ男は前世の仮想現実世界では、触らぬDQNに祟り無しと言われ、その残虐性と嗜虐性と殺られたら殺り返すプレイスタイルから、凶神オーバーヒールと呼ばれ忌み嫌われた腹黒者ツンデレだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る