第2話 んで、さっそくヤッちゃうもんね💛
四月六日同日。
車を厩舎近くに駐車し、目立たぬよう車体にギリーネットを被せた頃には
すでに日は落ちていた。
『黒い荷駄車』もとい
衛兵を言いくるめるのに時間を取ったからだ。
彼らは俺たちの要求する馬厩舎脇への駐車と警備に中々応じなかった。
それだけではなく、俺たちの身分を訝しんでネチネチ詰問を始めた。
イラついた僧侶がつい、彼女の所属する神殿と勇者一行の文言を口に出すまでは。
光の魔晶石が照らす、一等クラスの宿内ビアホール。
丸テーブルを囲んで三人、エール酒を酌み交わす。
「まぁ何とか要求通ったけどさぁ」
良くないよねぇ~、あっぴろげに身分明かしちゃうの。
「むぉ~、わかってますよぅ」
エール杯を片手に不満げにテーブルに突っ伏す僧侶。
私だって努力したんですぅと。
そりゃ俺も分かってるよっと。
「済んだ事だしいいじゃないか、勇者。
出立してまだ二月と経ってないけど、行く先々で似たような反応されるし」
エールを飲み干した戦士ちゃんが僧侶へのフォローを入れる、が……
「行く先々! そうなんだよ。
つー事は車に乗ってる限り、これからもきっとそうだ!」
故にどうだろう、世界観に合わせて馬車に乗り換えるというのは。
《絶対にイヤ》
僧侶と戦士ちゃんは、真顔で俺の提案を拒否する。
「あの乗り心地の良さを知ってしまったら、馬車なんて耐えれませんよぉ」
乗り心地ね。
僧侶よ。お前、初め車酔いしてゲェゲェ吐きまくってたろうが。
回想してやろうか?
車窓からこう、青い顔突き出してゲ…
あぁ、飯食ってる人いる?
じゃあ、キラキラフィルターを脳内補完で。
「下向かなきゃ大丈夫ですぅ! 嗚呼リクライニング万歳~♥」
この女、座席の倒し方を覚えてから
後部シートを全て倒し、一面ベッド状にして道中は爆睡している。
「雨も嵐も、ものともせず。室温も快適。
シートを倒すだけで、あっという間に贅沢な野営もできる。
まさに勇者の持つべき神器だよ」
大切にしないとねぇと戦士ちゃん。
二人は我が愛車改め『勇者の神器』SUV車の素晴らしさに意気投合し
彼女たちは調子よく次の酒を呷る。
君たちね、二日酔いは勘弁よ。
「けど今後もさぁ、ずーっとあのやり取りを交わす訳よ?
ちょっとウンザリしない?」
「それでも手放したくない利便性があるじゃないか。
第一アンタ、武器の補給どうすんだい」
ああ、それがあった。
実はあの車、銃火器や弾薬の補給元なのだ。
後部座席の壁面や座席に、時折聖なる文様――要は魔法陣が浮かび上がる。
そこから、にゅにゅにゅ~と都合良く兵器を供給してくれるのだ。
更にはガソリンメーターまで常に満タン振り切っている。
ドラ○もんの四次元ポケットより性能いいぞ。
「魔法陣さえ移せればなぁ……」
「しつこいって勇者。あれは神々の奇跡なんだろう?
人の術式程度じゃ移せっこないよ」
「勇者様は馬車旅のつらさを知らないんですよ……」
「そうそう、交尾もしにくいよ?」
ゴァ!っと僧侶が喉に流し込んだ酒を吹き出す。
それを無視して俺は交尾というワードに食いついた。
「あ、セックスしにくいのかぁ~! 困ったなぁ、それはイヤだなぁ」
何を隠そう俺と戦士ちゃんは肉体関係にある。
まぁビキニ美女と
「ゲホッゲッ……ェッフォ。ちょっと、ゴホッ……お二人とも」
公衆の場で……と僧侶は言葉を続けるが。
吹き出すどころではなかったようで、気管に入ったか
『猥褻な単語には私、抵抗がありますぅ~』ってか。
こういうところは清楚気取りやがって。
「オラオラ、テメェ猫かぶってねぇでチ〇ポしゃぶるんだよぉ」
おう早くしろよとエール瓶の口を〇ラ代わりに僧侶の頬を押し捻る。
先程も言ったが、男一人に女二人。
長々と旅すりゃ、性的関係を持つのは自然な流れであるが。
「ワタヒは純ひゅいにっ、ゆーひゃしゃまのおひからになる為に……」
この女。言い訳垂れては情を交わすのを拒否りやがる。
いや、嫌われてはないっすよ。
嫌われてんなら、こんな会話すら成り立たんすから。
本人もまんざらでは無いようで、機嫌が良ければキスぐらいはしてくれます。
『してくれる』ってなんか腹立つがね。
「先代の勇者イーズリは、従者を大切に扱ったそうですよ!」
おぉ、そうだった。なんと俺には先代がいる。
この中つ国に魔法技術をもたらした勇者、イーズリ。
二千年も前の人物だが。
あ、この世界の
彼が勇者と成った時から始まってるそうで。
でも今、俺が勇者として立ち上がった訳じゃないですかぁ。
暦ぃ、換えるべきじゃね?
あ。でも俺、嫌われてるんだったわ。
「そういやさ。先代、名乗ってるじゃん名前。イーズリって」
俺も、名乗っちゃダメなの?
「……この話、何度目ですかね。勇者様」
うぇいうぇい、人をそんな残念そうな目で見るな。
覚えてる。知ってて話題振ったんだよ。
『使命を果たすその日まで、勇者とその従者はその真名を伏せる』
それが先代からの習わしだそうで。
習わしって俺でまだ二代目なんだけどさ。
「ま、二千年もたてば伝統にもなっちゃうかぁ~」
「そぅですよ、なっちゃいます」
こんな感じで僧侶と駄弁っていると、足のすねにゾクゾクとする感触が走る。
僧侶から顔を離すと、戦士ちゃんがニンマリと笑みを浮かべた。
『今晩どうだい。これから、さ♥』
舌なめずりをして、ビキニの端から片方の乳首をポロリと俺に見せつける。
ブーツを脱いだ彼女の素足が、より激しく俺の足に絡みつく。
おお、僧侶よ。
お前、戦士ちゃん見習えよ。
この積極性をよ。
俺がおねだりせんでもバンバンパンパン応えてくれっぞ。
もうアホの僧侶など眼中に無い。
俺は妖艶なダークエルフに劣情たっぷりの笑みを返した。
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