第50話 私の告白




「こう先輩、好きです。こう先輩のこと、大好きです」


胸が張り裂けそうな思いだった。苦しい。心が熱い……苦しい。苦しい。苦しい…よ。


「みことちゃん。ありがとう。えっと…一応確認だけど、好き。ってことは…恋愛感情…ってこと、だよね?」

「は、はい……」


震える声で、私はこう先輩の言葉を肯定した。私の想いは、こう先輩に伝えられた。


「そっか…ありがとう。嬉しいよ……」


こう先輩の声のトーンで、こう先輩が困惑していることがわかった。その時点で、私の中の淡い期待が消滅した。


「ご、ごめんなさい…」


私は慌てて舞台から立ち去った。怖くて足が震えた。こう先輩の声を、これ以上聞きたくなかった。


「え、お、お姉ちゃん?」


天使(妹)を忘れて私はホールを出てしまう。慌ててホールを出たため、手に持っていたスマホ以外何も持っていない。アパートの部屋の鍵も、カバンもホールに忘れた。そういえば私、楽器片付けたかな…




「お姉ちゃん、よかった。ちゃんと部屋の前にいてくれて…」


しばらく、部屋の前で私はボーっと立っていた。すると、天使(妹)が笑顔で私に声をかけてくれた。私がホールに忘れたカバンなども持ってきてくれてかなり重そうだった。


「ごめん…」

「いいよ。宇佐美さんに送ってもらったから、今度、お姉ちゃんからもお礼言っておいてね。あと、宇佐美さん、すごく心配してたよ。久留美さんにこうさんもお姉ちゃんのことすごく心配してた」


妹は部屋の鍵を開けながら私に言う。部屋に入ってすぐに私は、妹を抱きしめた。


「こう先輩…なんて言ってた?」

「ゆめ先輩はこんな気持ちだったのかなって……お姉ちゃんの気持ちに応えてあげられなくて、本当に申し訳ない。って、自分を責めている感じだったよ。お姉ちゃん、こうさんにすごく大切にされてるんだね」

「後輩として…はね。すごく大切にしてもらってると思う」


でも、私は求めてしまった。先輩と後輩以上の関係をこう先輩に求めた。その結果が、この有り様だ。


「お姉ちゃん、ちゃんと、こうさんに謝りなよ。このままだと、本当にチューバパート、拗れちゃうよ」

「そう…だね…」


妹にそう言われて、それだけは避けないと、と思い私は涙を拭いスマホを開く。こう先輩に宇佐美先輩、久留美ちゃんから私を心配する連絡が来ていた。


とりあえず、こう先輩に、こう先輩から逃げたこととか、いっぱい謝らないと…と思っていた時、スマホが震えた。


スマホの画面には、ゆめ先輩からの着信画面が表示されている。ゆめ先輩からの電話に出るべきか、少し悩んだ。


少し悩んで、私は電話に出ることにした。私は妹にちょっと電話してくる。と言い、アパートの部屋の外に出た。






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