第49話 私に天使(妹)がくれたきっかけ。




「みことちゃん、その、さっきはごめんね。みことちゃん、本当に気を遣ってくれていたのに大歓迎とかヘラヘラしたこと言って…本当にごめん」


練習終わりにこう先輩は私に頭を下げた。そのこともだけど……


「別に…大丈夫です。気にしてません」

「お姉ちゃん。だめだよ。誤魔化せてないよ」


別に気にしていないふりをしようとしたが失敗したみたいだ。私の側にいた天使(妹)が私の服の袖を引っ張りながら言う。私、そんなに感情隠すの下手なのかなぁ?


「それに、こうさんもですよ。お姉ちゃん、こうさんの発言に怒ってるわけじゃないですからねぇ」

「み、みゆ…」


私は慌てて妹の口を塞ぐ。そのうち本当に私の気持ちを妹がこう先輩に暴露してしまいそうで怖いよ…


「お姉ちゃんも、言わないと伝わらないよ」


私が妹の口から手を離すと妹は私の耳元で囁く。たしかに。そうだよね。言わないと…伝わらないよね。


「みゆ、ちょっとこう先輩と2人きりにして」

「はーい」


私の言うことを聞いて妹は私とこう先輩をホールの舞台上で2人きりにしてくれた。練習が終わり、ホールから次々と人が出て行っているが、まだ、ホール内には結構な人がいて、いつ舞台に人が来てもおかしくない。さっさと、伝えてしまおう。私の気持ちを……


躊躇いは当然、ある。


ただでさえ複雑なチューバパートの人間関係を更に拗らせてしまうかもしれない。そう考えると自然とブレーキがかかってしまうが……それでも、こう先輩のことを好き。と言う気持ちが勝った。抑えきれなかった。


ゆめ先輩、こう先輩、ごめんなさい。と、覚悟を決めるまでの間、何度も心の中で2人の大切な先輩に謝罪をした。


覚悟を決めた私は私を見てくれているこう先輩と目を合わせる。


「こう先輩、好きです。こう先輩のこと、大好きです」


私とこう先輩、2人きりのホールの舞台で、私はこう先輩に想いを告げた。ホールの舞台を照らしているライトが、私の告白をドラマチックなものにするように、私とこう先輩を照らしていた。





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る