第48話 私と天使(妹)と恐怖心






「………なんかさ、最近みことちゃん、ゆめ先輩に似てきた?」


サークルの日、ゆめ先輩はいない。私とこう先輩、2人きりのパート練習の時間、こう先輩は私に言った。


「え、そうですか?」

「うん。なんか、ね。雰囲気というか…ちょっとした仕草が似てきた気がする」


………意図的に似せてみました♡とは口が裂けても言えない。


「ゆめ先輩みたいなかわいい方に似てきたって…ちょっと嬉しいです〜」

「あはは…ゆめ先輩みたいに……嫌いになったりしないでね………」

「それは有り得ないので安心してください」


割とまじな声のトーンでこう先輩が言うが、私がこう先輩を嫌いになったりするはずがない。


「………最近、ゆめ先輩の様子はどう?」

「この前、ゆめ先輩にも同じこと聞かれましたよ。最近、こう君の様子はどう?って……」

「あはは…そう、なんだ……」


こう先輩は嬉しそうな悲しそうな複雑な表情で私に言う。なんだかんだでお互いがお互いのこと気にかけてるんだよなぁ。


「そろそろ、会ってみたらどうですかぁ?私経由でお互いのこと気にかけてるんですし、一回試しに会ってみても……」

「うーん。僕は大歓迎だけどさ……ゆめ先輩がいいって言ったらかなぁ……」


僕は大歓迎。と言うこう先輩の発言にちょっとムッとする。誰のせいで私は苦労してると思ってんだよ。まあ、私のわがままも結構あるけど……

ていうか、こう先輩まだ私の気持ちに気づいていないの!?大歓迎。とか嬉々として言っちゃうあたりデリカシーが……


「あれ、みことちゃん、え、ちょっと…ど、どうしたの?」


意図的に不機嫌アピールをした私を見てこう先輩は慌て始める。ちゃんと反省してください。


「あーあ、こうさん、お姉ちゃん怒らせちゃった…」

「こう先輩、だめですよ。みーちゃんの気持ちも考えて発言しないと…みーちゃんは女の子なんですからねぇ。いろいろ繊細なんですよぉ」


たまたま通りかかった天使(妹)と久留美ちゃんのユーフォコンビがこう先輩を揶揄うように言う。こう先輩は、え?え?と慌てている。


「つまりですねぇ。お姉ちゃんはぁ、こうさんのことが……」

「みゆ、怒るよ」

「ごめんなさい」


私が結構ガチトーンで言うと妹は一瞬で涙目になりながら謝るので私は妹の頭を撫でてあげる。怒ってないよ。大丈夫だよ。


「………」


無言で、こう先輩は私を見つめていた。怖い。とか思われてないよね?え?私、怖かった?


久留美ちゃんに目線を向けるとどんまい。と言うように口を動かしていた。え、私、やらかした?と不安な気持ちになりながら私は元凶となった天使の頭を撫でていた。





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