第42話 私の天使(妹)





「あ、お姉ちゃん、おかえりなさい…そ、その…大丈夫?」


チューバパートでの話し合いが終わり、アパートに帰るとエプロン姿の天使(妹)が私を出迎えてくれた。玄関を入ってすぐの台所にエプロン姿の妹が立っているのを見て、私は少しだけど心を落ち着かせることができた。


「お姉ちゃん、みゆね。お姉ちゃんに元気出してほしくて頑張ってお料理作ったの!」

「そっか…ありがとうね。みゆ、大好き」

「みゆもお姉ちゃんのこと大好き」


疲れきった私の心を癒やしてくれる天使を私は抱きしめる。台所に目を向けると、冷蔵庫の材料で作ったと思われるカレーがあった。あまり料理が得意ではないのに一生懸命作ってくれたのだろう。鍋のカレーに浮かんでいるぎこちない切り方をされたにんじんやじゃがいもを見て、妹の優しさを感じて私はつい、泣いてしまう。


「お、お姉ちゃん?ほ、本当に大丈夫?みゆでよかったら話聞くよ…」

「ごめんね。大丈夫、だよ。みゆの優しさが嬉しくて泣いちゃっただけ。本当にありがとう」

「えへへ」


私に頭を撫でられて嬉しそうにしている妹を見て私の心はだいぶ…癒えた。




「私も…こう君とみことちゃんと一緒に楽しく楽器を吹きたいと思ってるよ。こう君とは、去年から一緒に楽しく楽器を吹こう。って私なりに頑張ってきたつもり……でも、この有様だよ。もう、疲れちゃったよ。こう君も、みことちゃんも疲れてるでしょう?私、どうせ今年で最後だからさ。これからは2人で頑張って。2人の演奏、楽しみにしてる。コンクールとか演奏会とか、邪魔じゃないなら聞きに行くね。こう君、ごめんなさい。みことちゃん、ごめんね。ダメな先輩で…」


そう言って、暗い表情で立ち上がり、楽器を片付けるゆめ先輩の姿を、ふと思い出した。楽器を楽器ケースに片付けて、「今までありがとう」と楽器ケースを抱きしめるゆめ先輩の表情が、忘れられない。


「ゆめ先輩、待ってますから」


ホールを出て行くゆめ先輩に、こう先輩はそう声をかけた。結局、私は何もできなかった。余計なことをしただけだった。




「お姉ちゃん、お姉ちゃんはいい子だよ」


暗い表情をしていた私を背伸びをして私に目線を強引に合わせてた妹が私を再び抱きしめてくれる。


「最後まで、諦めないでね。恋も…パートも…」

「みゆ、ありがとう」


私の心の傷を癒やし、私を応援してくれる妹、この子の存在が、本当にありがたかった。この子がいなかったら、とっくの昔に終わっていただろう。もう、諦めていただろう。


「みゆがお姉ちゃんを支えるから安心して」


この子が側にいてくれる。この子が私を支えてくれる。それだけで私はまだ、頑張れる気がした。






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