第40話 私と好きな人(先輩)と好き。
「やっと…見つけました……」
息をきらしながら私はキャンパス内に設置されているベンチに座っていたこう先輩に近づく。こう先輩は私を見て、申し訳なさそうな表情をした後、複雑そうな表情をする。
「戻りましょう」
「みことちゃん、ごめんね…もう、戻らない。みことちゃんにチューバやろう。って言っておいて本当に申し訳ない。ゆめ先輩はさ、すごくいい人だから…ゆめ先輩にいろいろ教えてもらいなよ。ゆめ先輩がいない時とかなら…呼んでくれれば教えたりするからさ……」
「ごめんなさい。それは嫌です」
私はキッパリとこう先輩に言い、ベンチに座っていたこう先輩の腕を掴んでこう先輩を強引にベンチから立たせてこう先輩を連れてホールに向かって歩く。
「みことちゃん…もう、やめて……」
「嫌です。私の知っているこう先輩は…チューバやめたいなんて思っていないはずです。まだ、ゆめ先輩のこと、諦めたりしてなくて、今でもゆめ先輩と仲良くしたい。って…思っているはずです。私、手伝いますから…こう先輩とゆめ先輩が仲良くなれて3人で楽しく練習できるパートが作れるように協力しますから…私は、こう先輩にやめて欲しくないです」
私は、必死でこう先輩に言う。こう先輩のために…私のために…私は、こう先輩が楽器を吹く姿をもっと見たいし、もっといろいろ教えてもらいたい。
「ダメな先輩だね…後輩を泣かしちゃうなんてさ…ごめんね……」
こう先輩は持っていた鞄からハンカチを取り出して私の涙を拭ってくれる。優しく、そっと、丁寧に…
「ダメな先輩なんかじゃないです。私が知ってるこう先輩は…ちょっと頼りないけど、優しくてかっこよくて…すごく、いい先輩です。そんなこう先輩のことが、私、大好きです。だから、行きましょう。これからも私が大好きなこう先輩でいてください。ちょっと頼りない部分は…後輩の私がフォローします。今度は、3人で、一回、きちんと話しましょう」
そう言いながら私はこう先輩に抱きついていた。泣きながらこう先輩を抱きしめる私をこう先輩は優しく抱きしめてくれた。
「後輩にこんなこと言わせるなんて本当に情けないなぁ…ごめんね」
「大丈夫ですよ。完璧な人なんていないんです。こう先輩が頼りない部分は私がフォローしますから。一緒に戻りましょう。私が知っているこう先輩なら、後輩にここまで言われて逃げたりはしないはずです。そう、ですよね?」
「あはは、そう。だね。うん。戻るよ。一緒に、来てくれる?」
「もちろんです!」
私は笑顔でこう先輩に答える。私とこう先輩は2人でホールへと戻る。
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